私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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1月半ばの月曜日。

出勤するとすぐにフロントに呼ばれた。

「なんだろう?」と思い、フロントに顔を出すと高須店長が「有里ちゃん!こっちこっち!」と手招きをして私を呼んだ。

 

「あー!こないだはありがとうございました。っていうか、すぐ帰っちゃうんやもんなぁ。」

 

高須店長とはこの間の飲み会以来顔を合わせていなかった。

飲み始めてすぐにいなくなってしまった高須さんに、少しだけ拗ねたような口調で声をかけた。

 

「あー!ごめんごめん!店の女の子がなんか泣きながら電話してきたんだよぉ。俺だって有里ちゃんたちと飲みたかったんだからぁ。」

 

白い歯を見せながら言う高須さん。

嘘ばっかりなのがすぐわかる。

 

「はいはい。そういうのいいですって。」

 

私は冷めた顔でそう言った後「あはは」と笑った。

 

「あー!有里ちゃん冷たい!ほんとだって!で?南さんとは仲良くなった?」

 

ニヤけた顔で聞く高須さん。

この人はすぐこういう事を面白がる人なんだな。

 

「なりましたよー!面白かったですよ。南さん、すごく良い方でした。」

 

「ほんと?よかったー。それ南に言うわ。大喜びだろうなー。また飲みに行こうよ。」

 

「またって高須さんは一緒に飲んでないでしょ?別に高須さんと一緒に飲みに行かなくてもいいですよ。南さんと行きますから。あはは。」

 

「うわ!有里ちゃん、いつの間にそんなこと言うようになったの?冷たいわー。」

 

「はいはい。でー…今日は?」

 

私は高須さんを笑いながらあしらい、話しを進めた。

この人とはこのくらいの距離がいいと気づいたから。

ただちゃらちゃらした男だということを確信したから。

 

「あ!そうそう!ホームページできたよぉ~。すごくいいよぉー。」

 

高須さんは嬉しそうな顔をして私に言った。

 

「え?!ほんまですか?見たい見たい!」

 

なんだかんだで楽しみにしていた私。

どんな仕上がりなのかワクワクする。

 

「うん。今見せるね。」

 

私たちはフロントの後ろの部屋にあるパソコンの前に顔を並べた。

 

「えーと…あ、これこれ。」

 

高須さんはマウスとキーボードを手慣れた手つきで操作しながらシャトークイーンのページを開いた。

 

「これが新しいシャトークイーンのページね。」

 

パールホワイトの画面にブルーの文字で『シャトークイーン』とかっこよく書かれている。

そして在籍している女の子の写真が一覧に並ぶ。

顔出しOKの小雪さんとねねさんはかなり目立つ配置になっていた。

2人ともとても綺麗だ。

 

そして『ナンバー1』の文字が大きく書かれた理奈さんの写真が大きく掲載されている。

理奈さんは口元を隠して黒いTバックのお尻をこちらに向けて写っていた。

 

か…かっこいい…

 

見事なヒップラインに見とれる。

 

その下には『当店ナンバー2』と書かれている私の写真。

 

口元を隠してベッドに腰かけている私。

ピンクの花柄の下着を着て、おしとやかに座っている。

 

…う…

…太ってんなぁ…

 

自分の写真にがっくりくる。

こんな写真載せていいの?とみんなに聞きたくなる。

 

「でね、ここをクリックすると…」

 

高須さんはページの上方にある『Ari‘s Bar』と書かれたバナーをクリックした。

 

「ほら!どう?」

 

黒い背景に綺麗なブルーとシルバーの文字で『Ari‘s Bar』と書かれていて、その下には私の写真が何枚も載っていた。

前に見本で見せてもらった時よりもはるかに綺麗でかっこよくなっている。

 

「うわぁ…すごい…」

 

私の写真は直視したくないけど、レイアウトやデザインが素敵で、遠目から見るとめっちゃいい女が載っているようにみえるから不思議だ。

 

「で、ここを開くと有里ちゃんの日記が観られるようになってて、こっちを開くと掲示板。ここでお客さんとやりとりできるから。」

 

高須さんは次々と私に説明した。

その説明は早口ながらもすごくわかりやすく、すぐに全体像が把握できるものだった。

 

「じゃあ有里ちゃんの携帯からもここのパソコンからも操作出来るように教えておくね。」

 

高須さんは私の携帯で日記と掲示板の管理ができるように設定してくれた。

そして店のパソコンからもアクセスできるようにやり方を丁寧に教えてくれた。

 

「これで有里ちゃんの携帯からいつでも投稿できるから。なるべく日記書いてよ。なんでもいいから。あと、掲示板でもやりとりしてくれるとお客さん喜ぶからさ。」

 

…なんか嬉しい…

私が一つのページを持てるなんて嬉しい。

そして私が自分の日記を書いて、誰かが読んでくれるなんて。

 

「うわぁ…なんかすごいですねぇ…。嬉しいなぁ…」

 

私はこの信じられない事実を噛みしめるように高須さんに言った。

 

「え?そう?嬉しい?」

 

高須さんはニコニコ笑いながら私に聞いた。

 

「はい…なんか信じられません。こんな大したことない実績しかあげてない私がページを持てるなんて。ありがとうございます!」

 

私は高須さんにペコっと頭を下げた。

 

「えー…そんなに喜んでもらえるなんてこっちが嬉しいなぁ。また少し経ったら写真入れ替えたりしようね。じゃこれで大丈夫?今日からみんなが見られるようにしちゃっていい?」

 

「はい!大丈夫です。よろしくお願いします。」

 

「うん。じゃあ店にもどったら早速やるからさ。楽しんでよ。またわからないことあったらなんでも聞いて。あ、小雪ちゃんも詳しいみたいだから小雪ちゃんに聞いてもいいかも。」

 

高須さんは上機嫌で私にそう言った。

そして「じゃ、またね!」とさわやか風に店から出て行った。

 

何度も自分のページを見る。

「ふふ」と笑みがこぼれる。

 

 

「有里。話し終わったか?」

 

フロントから富永さんが顔を出し、私に聞いた。

 

「あ、もう終わったー。」

 

パッと顔を上げて返事をする。

ニヤニヤ見てたことがばれたら恥ずかしい。

 

「どうや?どんな感じになったんじゃ?」

 

富永さんが顔をにゅっと近づけてパソコンの画面を見る。

 

「え?これこれ。どうかな?」

 

自分の写真を見られるのは恥ずかしかったけど、どうせ後で見られるんだしと開き直った。

 

「おー。ええやないかぁ。ええ女やのぉ。綺麗やないかぁ。立派なページやのぉ。」

 

富永さんは目を細めながらそう言った。

 

「あはは…そう?ありがとう。もうすぐ辞めるのにこんなページ作ってもらっちゃって…ありがとうね、富永さん。」

 

嬉しいけど申し訳ない。

そんな気持ちだった。

でもとてもありがたいと思っていたから心からお礼を伝えた。

 

「いや、ええんじゃ。有里はこういうことをやるだけの女やで。あと少しだろうがなんじゃろうが、こうやった方が店にとってもいいと思ったからやったまでやで。

日記、わしも楽しみにしてるから。のぉ?」

 

富永さんは真剣な顔で私に向かってそう言った。

 

泣きそうになった。

 

そしてあと少しの期間だけどもっと頑張ろうと思った。

 

「えへへ…ありがとうね。頑張るわ。」

 

「おう。頼むわな。」

 

富永さんはあれから『援助交際』のことを自分からは口にしていない。

私が声をかけるまで、自分からは言わないでおこうとしているみたいだった。

そして仕事中は今まで通りの何も変わらない態度でいた。

そんな富永さんを私は「いいな」と思っていたし、ありがたいと感じていた。

 

 

「明日から旅行行くんやろ?理奈と。」

 

富永さんが表情を変えずに私に聞いた。

 

「あ、そうそう。明日から一泊でね。お土産買ってくるわ。」

 

「そんなんいらんわ。楽しんできぃ。また酒でも飲みながら話し聞かせてくれ。のぉ?」

 

目を細めて優しく言う富永さん。

 

「うん。ありがとう。帰ってきたら酒でも飲もう。」

 

「おう。」

 

 

明日から理奈さんと旅行だ。

女友達と2人で旅行なんて生まれて初めてだ。

そしてこれが最後の旅行になるかもしれないんだ。

 

あ、この旅行のことを日記に書いたらお客さん喜ぶんじゃないかなぁ。

きっと理奈さんファンの人たちが喜ぶなぁ。

なんて書こう?

あ、理奈さんの好きなお酒とか書いたら喜ぶかも!

理奈さんの癖とか、私たちの会話とか…

どんな文体で書こうか。

フランクな感じだけど、バカっぽいのはいやだなぁ…

 

気付くと私は日記の内容の事ばかり考えていた。

 

私の文章が誰かに読まれるんだ。

 

そのことを考えただけでワクワクしてくる。

 

あ!

今日のお客さんとの会話も書こう。

楽しい会話がいいなぁ。

あ!

お酒のことも書かなきゃ。

だってBarだもんね。

一番最初はどんな挨拶にしようかなぁ…

 

 

自分の日記のことばかり考えている私。

どんな世界観にしていこうか、理奈さんや小雪さんやねねさんやななちゃんのことをどんな風に書こうか、私のことをどれだけ書こうか、考えているだけで嬉しい。

 

 

「えーと…早速今日のを考えようかな…」

 

個室の準備をしながらブツブツと文章を考える私。

 

楽しい。

 

今日出会うお客さんがどんな人なのかさえも楽しく考えられる自分に驚く。

 

私は誰かに読まれるであろう日記を書くことがこれほど楽しみになるとは思っていなかった。

 

「えーと…初めまして、有里です!かなぁ…うーん、それじゃありきたりかぁ…」

 

私は自分が『文章を書く』ことが好きだとふと思い出していた。

 

それからの私はホームページ上の『日記を書く』ことが毎日の楽しみになっていく。

 

 

 

つづく。

 

 

 

 

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