私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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「有里。なんや今日写真撮ることになったんやな。1時間後言うとったで。大丈夫なんか?」

 

個室から控室に戻ろうとしている時、廊下で富永さんが私を呼び止めた。

 

「あー…なんやそうみたいやねぇ。まぁええんちゃう?」

 

私はなんとなく他人事のような言い方で答えた。

もしかしたらこれでK氏にバレてしまうかもしれないけど、それならそれでいいやと思っていた。

どうせ3月には会いに行くんだし、バレるのが嫌で今回の話しを断るなんて格好悪いような気がして。

 

「まぁ有里がええならええんやけどな…。そしたらそれまで予約とらんようにするから。頼むわな。」

 

「あぁ、はい。わかりました。」

 

下着姿で写真を撮られるなんて初めてだ。

こんなことなら昨日から何も食べないでおけばよかった。

お腹の出っ張りがちょっと気になる。

今日持ってきた下着はあんまり気に入ってないヤツだ。

こんなことならもう数組下着を持って来ればよかった。

 

自分がちょっとワクワクしていることに驚く。

写真を撮られて自分のページを持てるかも知れないことを少し喜んでいる。

 

控室に戻ると理奈さんが「有里ちゃんこれから写真撮る言われた?」と聞いてきた。

私は「なんかそうらしいなぁ」とそっけなく答えた。

理奈さんは私の次に写真を撮られるらしい。

 

「なんやせわしないなぁ」

 

理奈さんが笑いながら言った。

 

「うん。そうやねぇ。」

 

私はちょっとだけドキドキしているのを悟られないようにそっけなく言った。

 

控室でしばらく本を読んだりテレビを観たりしていると、スピーカーから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

「有里さん。有里さん。」

 

「はい。」

 

「高須店長が来てます。」

 

 

私は理奈さんに「ちょっと行ってくるわ」と言い、控室を後にした。

 

 

「有里ちゃん。お待たせねー。」

 

店の入り口に行くと高須店長が白い歯を見せて笑って言った。

 

「あ、はい。」

 

「じゃ、行こうか。」

 

高須店長はまた同じボーイさんを引き連れてやってきた。

 

「おい。これ丁寧に運べよ。」

 

「あ、はい。」

 

若いボーイさんは高須店長に顎で使われている。

その様子は見てて不快なものだった。

 

「じゃ有里ちゃん。まずは洋服のままで撮ろうかー。」

 

高須店長は私にポーズの指示をして、その度に「いいねー。それいいねー。」と言いながら写真を撮った。

私は口元を手で隠してポーズをとった。

 

「じゃ今度は下着になってもらおうかなー。こっち向いてた方がいい?」

 

「あー…じゃあお願いします。」

 

私は高須店長とボーイさんに後ろを向いていてもらい今つけている下着を外し、持って来ていたピンクのレースの下着に付け替えた。

 

「あ、もういいですよ。」

 

「え?もういい?見るよ。」

 

「あ、はい。」

 

「おー!いいじゃん。可愛いよぉー。」

 

「あ…ありがとうございます。」

 

「じゃーねー…まずベッドに腰かけてもらってぇ…」

 

高須店長はまたいくつかポーズの指示を出した。

 

私は四つん這いになったり壁に手をついてお尻を突き出したりするポーズをとって何枚も写真を撮られた。

口元を手で隠すのを忘れずに。

 

「有里ちゃーん。よかったよぉ。明日にはなんとなくページ作ってみるから一回見て見てよ。ね?」

 

高須店長はにこやかにそう言いながら私の肩にポンと手を置いた。

 

「あ、はい。わかりました。」

 

「うん。お疲れさまー。あ、明日にでも飲みに行かない?」

 

高須さんは軽やかに私を飲みに誘った。

 

「あー…明日ですか?」

 

「うん。ダメ?お疲れさま会ってことで。」

 

なんのお疲れさま会だ?

 

「こっちのボーイも誘うからさ。ね?」

 

「あー…はい。いいですけど…」

 

「じゃ明日また来るわ。いいの作るからねー。」

 

 

高須さんはボーイさんに「行くぞ。」と言い、私に「じゃ明日ねー!」と言いながら個室を出て行った。

 

 

「…はぁ…」

 

いつの間にか飲みに行く約束をしてしまった…

理奈さんも誘われるかな…

そうだといいなぁ…

 

そんなことを思いながら脱いだワンピースを着た。

 

高須店長の感じがなんとなく好きになれない。

絶対に本心を人に見せない人だと感じる。

女の子のことも『商品』としてしか見ていないようだった。

 

私を飲みに誘ったってなんの意味もないのに…

 

フロントに行き、富永さんに撮影が終わったことを報告する。

 

「お疲れさん。どやった?」

 

富永さんが私に聞いた。

 

「あぁ…まぁなんとなくな。あれでいいのかどうか知らんけどとりあえず終わったわ。」

 

撮影は楽しくもなく、嫌でもなかった。

いつの間にか終わったという感じだった。

 

「おう。そうか。で?高須はなんて言うとった?」

 

「あー…よかったって言うとったで。明日にでも一回サンプルとして作ってくるって。」

 

「そうか。まぁ…よかったのぉ。」

 

富永さんがなんとなく淋しそうにそう言った。

 

「うん…。まぁな。そんでな、明日飲みに行こう言われたんや。向こうのボーイさんも一緒にって。なんでやろ?」

 

高須店長が私を飲みに誘った真意がいまいちわからなかった。

自分の店の子を誘うならなんとなくわかる。

でも私は実質関わりのない立場だ。

とりあえず富永さんに話しをしておいた方がいいと思って言ってみた。

 

「え?有里を飲みに誘った?あいつ…有里に気があるんちゃうか?」

 

「いや、それはないわ。そういう感じやないと思うで。」

 

「んー。いや、多分気ぃがあるな。で?どないするん?」

 

「いや、ほんまにそれはないわ。行く言うてしまったんや。だから理奈さんも一緒に行かへんかなぁと思うて。」

 

「そうやな…。んー…」

 

富永さんは自分の店の子が飲みに誘われているのがちょっと気にくわない様子だった。

その気持ち、なんとなくわかる。

 

「そや。富永さんも一緒に行ったらええんや。姉妹店交流会?みたいな感じ?それええやん。なぁ?」

 

私がそう言うと富永さんはことさら嫌な顔をした。

 

「誘われてもおらんのに行けんやろぉー!そんなんで行ったらアホじゃ。」

 

「あぁーそっかぁ…」

 

富永さんはすこし間を置いてこう言った。

 

「断ったらええが。」

 

こんなことを言うのは珍しい。

そして富永さんは更にもう一言付け加えた。

 

「行かんでええが。な?」

 

私に行って欲しくないと言っている。

姉妹店の店長の誘いを断れと言っている。

 

「そんなん富永さんが言うの珍しいなぁ。」

 

私がそう言うと冨永さんは下を向いたまま「そうか?」と小さな声で呟いた。

 

「…有里は可愛いうちの子ぉやからな。」

 

不安なんだ。

富永さんは今不安なんだと感じた。

 

「あはは。ありがとう。まぁちょっと様子見るわ。またなんか言うて来たらちゃんと言うからな。」

 

「おう。わかった。高須には気ぃつけよ。」

 

「うん。わかった。ありがとう。」

 

 

しばらく控室で過ごしていると理奈さんが撮影を終えて戻ってきた。

 

「有里ちゃんどんなポーズで撮った?」

 

理奈さんは笑いながら聞いてきた。

どうやらちょっと楽しかったらしく、自分がどんなポーズをしたのか控室でやってみせてくれた。

 

「こんなんとかな、こんなことしろ言うねんでー。おもろかったわ。高須さんおもろいなぁ。あはは。」

 

笑ってるよ。

この人はほんとに無邪気だ。

 

「なぁ、高須さんに飲みに誘われた?」

 

私は率直に理奈さんに聞いた。

 

「え?誘われへんで。なに?有里ちゃん誘われたん?」

 

…誘ってないんかい…

なんで?

 

「あー…うん。なんでやろ。」

 

高須さんは絶対私に気があるわけではない。

それは絶対の自信があった。

あの人のタイプは私のような女じゃない。

 

「有里ちゃんに気ぃがあるんやな。」

 

理奈さんは富永さんと同じことを言った。

まぁそう言うのが妥当な出来事ではある。

 

「いや、絶対ちゃうねん。それはわかるんや。」

 

「えー?なんでわかるん?」

 

「いや、これはほんまにちゃうねん。わかるねん。」

 

理奈さんは何度も「そんなんわからんやろがぁ」と言った。

でも絶対にそんなんじゃないのがわかる。

 

「理奈さんも一緒に行こうや。明日飲みに。」

 

私は理奈さんを誘った。

理奈さんは「行ってもお邪魔やないならええで。」と笑っていた。

 

「明日また来る言うてたから、そんとき理奈さんも一緒にって言うわ。向こうもボーイさん連れてくる言うてたから。な?」

 

「へー。まぁええけど。どこ行くんやろな?」

 

理奈さんはあっけらかんと私の誘いに乗ってくれた。

 

高須さんの誘いを断ってもよかったんだけど断る理由もさほどない。

そして高須という男がどんな奴なのかをちょっと知りたくもあった。

 

 

「じゃ、明日よろしくね。」

 

「うん。わかったわぁ。」

 

私と理奈さんはそんな約束をした。

 

私は自分のページがどんな風に出来るのか、高須さんがどんな奴なのか、好奇心でいっぱいになっていた。

 

 

つづく。

 

 

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163 - 私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

 

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