私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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次の日。

麗さんはお店に来なかった。

お店のおねえさん達は口々に「やっぱりなぁ。」「そらそうやろ。」と言っていた。

私は…

 

麗さんが来ていないことにショックを受けていた。

もし来ていいてもショックを受けていたんだと思うけど。

 

数日が過ぎ、だんだんと麗さんのことが控室の話題にのぼらなくなる。

まるで麗さんが来たことが夢だったかのように感じられることもあった。

 

「麗さんどうしてるんですか?」とある日広田さんに聞いてみたことがあった。

それに対して広田さんは「ゆっくり休んでるんやろ。もうすぐまた来るで。」とサラッと言っていた。

 

また来るんだ…

 

麗さんのこの生き地獄(のように私には見えた)はいつまで続くんだろうか?

 

 

 

私は忍さんや麗さんのことがあってから、より真剣にこの仕事について考えるようになった。

小さなノートをいつも持ち歩き、その時感じたことや気付いたこと、疑問に思ったことをできるだけ書き綴るようになっていた。

 

この場所に男の人は何を求めてやってくるんだろう?

お金ってなんだろう?

SEXってどこからどこまでのことを言うんだろう。

人がSEXに求めることってなんだろう?

ソープランドの良さってなんだろう?

人は何故男や女やお金や酒や薬に翻弄されるんだろう?

 

…麗さんが人気がでたのはなんでだろう?

…お客さんはあの変な状態にほんとに気付いてないんだろうか?

 

 

私のノートには疑問の言葉がたくさん並んだ。

答がわからないものばかりだった。

 

私を指名してくれるお客さんは私の何が良いと感じたんだろう?

 

この答えもわからない。

ただただ一人一人のお客さんに対して懸命に模索していくしかなかった。

 

 

あと1週間で6月が終わる。

広田さんにはまだ辞めることを言っていない。

そのことにたいする懸念とともに私には気がかりなことがもう一つあった。

 

お客さんの小林さんのこと。

 

気さくな優しい青年の小林さんのことがずっと気がかりでいた。

「またぜっったい来るから!」と言いながら帰って行った小林さん。

私はあの時間が楽しすぎて忘れられないでいた。

そして辞める時が近づくにつれ、いつもやきもきとしていた。

「有里さん、ご指名です」とアナウンスされて階段で待っている時はいつも「小林さんかなー?」と思っていた。

そしてそれがことごとく外れ、その度に心の中で落胆をしていた。

 

 

「有里さん。有里さん。」

 

控室のスピーカーから呼び出しの声が響く。

 

「はい。」

 

相変わらずドキドキしながら次の言葉を待つ。

 

「ご指名です。スタンバイお願いします。」

 

よしっ!!よかったぁ~…

 

まず安堵。

そしてすぐに「小林さんかなぁ…」のドキドキに変わる。

 

フロントに行くと佐々木さんが「はい。90分ね。」と言いながらチケットを渡した。

 

「はい。わかりました。」

 

冷静に返事をする私。

でも内心は「90分?!やった!今度こそ小林さんだ!」とワクワクしていた。

小林さんは「今度は絶対90分で来るわ!」と言っていた。

今度こそ絶対だ!

 

階段で待機する。

 

「うー…ドキドキするー…」

 

何度も足踏みをする。

たまに何度もジャンプとかしてみたりして。

私はいつもこうやってこの一番緊張する時間をやり過ごしていた。

 

小林さんじゃなかったらショックだなぁ…

 

そんなことを思いながら何度も小さくジャンプをする。

 

「ふぅ!…落ち着け…落ち着け…」

緊張を和らげるために胸のあたりをトントンと叩きながら自分に言い聞かせる。

これを毎回やってる私。

いつになったら慣れるのだろうか?

あ、これもノートに書いておかなきゃ。

「いつになったら慣れるのか?私に慣れる日がやってくるんだろうか?」って。

 

絨毯の上を歩く静かな足音が聞こえてくる。

 

来た!

 

「ふぅ~…」

 

呼吸を整え、髪型と服装を整える。

 

「うわっ!びっくりしたー!!」

「うわっ!!すいません!いらっしゃいませ!」

 

また階段に身を隠しすぎてしまった。

 

「あ!やっと来てくれた!待ってたんですよー!」

 

顔を見て嬉しくなった。

そこには小林さんの優しそうな顔があった。

 

「え?待っててくれたん?嬉しいなー!」

 

嬉しそうに笑う小林さん。

 

「もう!もうすぐ会えなくなっちゃうとこやったんですよ!」

 

小声で言う私。

 

「えっ?!なになに?なにそれ?!そんなんダメ!あかんーあかんよぉー。」

 

階段を上がりながら焦る小林さん。

 

「ちゃんと上で話しますから!」

「聞く聞く!俺ちゃんと聞く!」

 

まだ小林さんに会うのは二回目なのに、なぜかもう何度も会ってるような居心地の良さを感じていた。

 

個室に入り二人でベッドに腰かける。

 

「なになに?!有里ちゃん、どういうこと?」

 

小林さんは焦って聞いてきた。

 

「実は…」

 

私はお店を辞めようと思ってることを簡単な経緯を交えながら話した。

小林さんの落ち着いて話しを聞いてくれる雰囲気に任せて、なんでもかんでも話してしまいそうになる自分を制御しながら。

 

「そうやったんやー。なかなか来られなくてごめんやったで。いっそがしくてなぁ…。早く来たい!ってずっと思ってたんやで。ほんまに!」

 

小林さんはほんとにそう思っていてくれたように見えた。

 

「でも危なかったなぁ…もう少し遅くなってたらもう会えへんくなってたやんか!俺偉い!俺、やったな。な?有里ちゃん!」

 

「あははは。そうやねー!」

 

「俺新しいお店にも絶対行くから!教えてくれる?」

 

「うん。ありがとう。後で教えるわー。とりあえず…お風呂入る?」

 

「あ!そうやな!入ろう入ろう!」

 

小林さんといると明るい気持ちになる。

誠実、素直、まっすぐ…

そんな言葉がぴったりくるような人。

 

「有里ちゃん、今日はマットええよ。たくさん有里ちゃんと話したいから。」

 

小林さんは私にカラダを洗ってもらいながらニコニコしながらそう言った。

 

「これも有里ちゃんが嫌じゃなければ適当でええねんで!自分で洗ってもええねんからなー。」

 

カラダを洗うのも適当でいいという小林さん。

何をしにここへ?と思ってしまう。

 

「有里ちゃん、一緒にお風呂入ろう!」

 

小林さんはちゃっちゃと泡を洗い流して私をお風呂に誘った。

 

「潜望鏡?やったっけ?それもしなくてええからね。一緒に入りたいだけやから!」

 

無邪気だった。

小林さんは私と向かい合わせにお風呂に入り、私の顔を見てずっとニコニコしていた。

 

「有里ちゃん、こっち来て。」

 

私を後ろ向きにさせ、私のカラダを小林さんにもたれかけさせた。

小林さんは私を後ろから抱きしめる。

私は小林さんの腕をギュッと掴んだ。

 

「有里ちゃん…キスしてええ?」

 

耳元で小林さんが囁く。

 

「もちろん。」

 

笑ながら後ろを振り返る。

小林さんは目を閉じてうっとりと私とキスをした。

私は目を開いてその姿をジッと見ながらキスを続けた。

私の口に小林さんの舌が入ってくる。

私はそれを受け入れる。

小林さんはずっと目をつぶってうっとりとしていた。

私は小林さんに覆いかぶさるように体制を変え、首に腕を絡めた。

 

目を見開いてジッと小林さんを見続ける。

長いキスの間、小林さんはずっと目を閉じていた。

そしてずっとうっとりとしていた。

 

「はぁ…はぁ…有里ちゃん…ベッド行こう…」

 

小林さんはやっと目を開き、興奮しながら私をベッドに誘った。

 

「うん。早く行こう!」

 

私はザブンと湯船から立ち上がり小林さんの手を引いた。

 

急いでカラダを拭き合い、そのままベッドで抱き合った。

 

「はぁはぁ…有里ちゃん…有里ちゃん…」

 

何度も名前を呼ぶ小林さん。

その一生懸命さや健気さに少し心が揺れた。

SEXには興奮しなかったけど。

 

小林さんは汗だくになりながら私を喜ばそうとしてくれていた。

優しい手つき、優しい舌使い。

乳首やクリトリスの愛撫はうまいとは言えなかったけど、充分気持ちが良かった。

私は小林さんの懸命な愛撫でイッた。

 

「あぁ…イク…イッちゃうよ…あぁ、あぁ!」

 

ビクビクする私のカラダとイッたあとの私の表情を見て小林さんは嬉しそうな顔をした。

 

「…気持ち良かった?」

 

私に顔を近づけて聞いてきた。

 

「…うん。…イッちゃった…えへへ」

 

恥ずかしそうに笑いながら答える私。

男の人はこういう顔をしながらこう言うと喜ぶんだってことを、私はなんとなくわかっている。

 

「よかった!」

 

屈託なく嬉しそうに笑う小林さん。

なんとなく純粋な小林さんを騙しているような気分になった。

 

小林さんはコンドームを自分でつけようとした。

 

「やります。私がやる。」

 

「え?ほんま?じゃ頼もうっと。」

 

ここ、ソープランドですよ。という言葉が喉まで出かかった。

小林さんは私をソープ嬢という目で見てないみたいだった。

 

コンドームをつけ終わると小林さんは私をベッドに優しく寝かせた。

上に覆いかぶさり、ゆっくり丁寧に挿入してきた。

 

「うぅ…あぁ…」

 

おちんちんが膣内に入ると小林さんは眉間にしわを寄せ、気持ちよさそうに呻いた。

小林さんのおちんちんは小さい。

私は挿入の快感をまるで感じていなかった。

 

「あぁ…あー…」

 

演技だ。

この喘ぎは全部演技。

小林さんはその私の喘ぎ声と私の苦悶の表情を見て、それが演技だとは思わないだろう。

素直で純粋だから。

 

「あぁ、有里ちゃん!もうイク…」

 

「あぁ…うん…ええよ…あぁー…」

 

まだ数回しか動いていない。

小林さんは早漏だ。

 

「イク!うぅ!うー…」

 

「あぁ…はぁ…はぁ…」

 

感じてもいないし息も上がっていない。

でもそんな演技は前よりもうまくなっていた。

 

小林さんは私に優しくキスをした。

 

「…ありがとう…疲れなかった?」

 

小林さんは私にお礼を言った。

そして私に「疲れなかった?」と聞いた。

 

私はその言葉と態度にやられた。

 

SEX後の後始末をして、二人でベッドに腰かけた。

身体にタオルを巻いて二人で冷たいお茶を飲んだ。

 

「…小林さん。あのさ…」

 

「え?なに?」

 

 

「…あのさ…」

 

 

つづく。

 

 

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56 - 私のコト

 

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