私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

コラム~有里ちゃんこぼれ話②~

 

有里ちゃんこぼれ話第二話です。

前回の『剃毛問題』よりこちらのお話しを待っている方の方が多いようでしたね。笑

 

今日のお話しは

 

『有里ちゃん専用電話を持った富永さんは結局有里ちゃんを抱けたのか?』

 

です!

 

こちらは引き続き女優のMさんからの質問です。

 

うひひ。

気になります?

 

ではまいりましょう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

コバくんと一緒に比叡山坂本をあとにして、阪急塚口での生活が始まった小娘ゆっきぃ。

新しく職に就くまで半月ほどブラブラとしておりました。

そんな時「そういえば、富永さんが私専用電話を持ったんだよなぁ…」と思い出す。

シャトークイーンを辞める時、頂いた餞別の金額が思っていたよりも大きかったこともあり、お礼も伝えたい。(社長からは8万円。シャトークイーンからは5万円という金額でした。)

そして、まぁこっちでの生活が始まったと報告でもしておくか、という思いもあり連絡をします。

あくまでもただのお礼と報告。

富永さんの言っていたような『援助交際』なんてするつもりなんてありません。

でも、どこかで「富永さんのSEXってどんなんだろう?」という興味があったのは確か。

 

さて、どうなるか。

 

 

 

呼び出し音を聞きながら、富永さんの懐かしい声を思い出して「ふふ」と笑う。

どんな電話の出方をするだろう?

 

「もしもし?有里か?」

 

小声の富永さん。

 

「もしもし?富永さん?有里だよ。今大丈夫?」

 

こっちまで小声になる。

 

「おぉ…元気か?電話くれたんやなぁ。ありがとう。」

 

喜んでいるのが声でわかる。

シャトークイーンを辞めてからまだ少ししか経っていないのに懐かしく感じる。

 

「うん。あれからな、阪急塚口に部屋を借りて住んでんねん。」

 

「おぉ。そうかぁ。で、今は何をやってるんや?」

 

「まだなんもしてへん。バーテンダーになろうと思ってな。今自分が働きたい!と思うとこを探してんねん。」

 

「おーそうかぁ。有里は酒が好きやからなぁ。向いてる思うで。」

 

「そう?ありがとう。そういえば、餞別ありがとうな。あんなにもらってしまって…ほんまに申し訳ないわ。でも…助かるわ。」

 

「何をいうてるんや。あれでも少ないほうやな。あんなことしかしてやれんでほんまに申し訳ないと思うとる。」

 

「ううん。ありがとう。あ、あの木の小箱。開けたで。嬉しかったで。あれ、ずっと大事に持っとくわ。」

 

「あぁ…あれな。…そうか。それならよかった。」

 

「うん。…それだけ。それだけ伝えたくて連絡したんや。元気やで。富永さんも元気そうやな。」

 

「おう…。そうか。それだけか。」

 

「うん。」

 

「……」

 

黙り込む富永さん。

私はその沈黙の意味することがわかる。

でもその沈黙がいたたまれなくて口を開く。

 

「…じゃ。また電話するわ。またね!」

 

極力明るく言う私。

 

「…有里!あのぉー…一緒に酒飲もうや。のぉ?」

 

富永さんが私を飲みに誘う。

 

「え…?あー…」

 

まぁ一緒に酒を飲むくらいいだろう。

別にそれだけのことだし。

 

「…うん。いいよ。」

 

「そうか。まぁただ飲むだけや。それならええやろ?のぉ?」

 

「うん。いいよ。わかった。」

 

 

私と富永さんはそんな会話をして、飲みに行く日程と場所を決めた。

 

それから数日後。

富永さんと私は大阪の十三(じゅうそう)という街で待ち合わせをして飲みに行く。

富永さんはお店の休みごとに競艇に出かけ、その帰りに十三や新世界(大阪通天閣の近く)に飲みに行っているらしく、大阪に詳しかった。

 

十三はとても私好みの街で、一杯飲み屋がたくさんある。

その中のひとつのお店、青いのれんの古びた飲み屋に2人で入った。

 

「有里。今日はありがとうな。こうやって会えるだけで嬉しいんやで。のぉ?」

 

細い目をますます細くして嬉しそうに言う富永さん。

相変わらず可愛い。

でっぷりと出たお腹を時折さすりながら話す姿も可愛らしい。

 

「それでな、わしはこう言ったんじゃ。それでな…」

 

富永さんはお酒が入ると饒舌になる。

そして何度も同じ話をする。

 

「ん?これは前にも話したかのぉ?」

 

そして首をかしげてこうやって私に時々確認する。

 

「あははは。話したけどもう一度話してよ。」

 

私は笑いながら富永さんの肩をポンと叩き、「もっと話せ」と促す。

そして時折「でも、それは富永さんが悪いやろぉー。だってな…」と自分の意見を言う。

その私の意見を聞いて富永さんは「うーん…そうかぁ…わしにはわからんのぉ。」としょぼんとしたりする。

 

笑ったり、しょぼんとしたり、させたり、また長い話しを聞いたり、富永さんの「わしは頑張るでぇ!」のいつものセリフを聞いたりしながら時が過ぎた。

 

こうやってたまに飲みにいくのもいいなぁと思っていた時、富永さんが私にこう言った。

 

「で…有里。あれは…考えてくれたんかのぉ?」

 

酔っぱらった細い目で私に聞く冨永さん。

 

「え?あれ?…うーん…」

 

正直考えてなかった。

どうするかなんて考えていなかった。

その時に考えようと思っていたから。

 

「わしは援助交際でええんや。有里は若いからのぉ。有里とこの先どうこうしようとなんて思わん。そんな贅沢なことは思わんよ。でものぉ。わしは有里を抱きたいんや。わしもそろそろ男として機能しなくなってきてるんじゃ。だからのぉ、有里を抱きたい思うてるんや。どうやろぉ?」

 

富永さんの言葉がなんだか切なかった。

そしてその時、酔っぱらった私の頭の中に富永さんの毎日がフッと浮かんだ。

 

仕事を夜遅くまでして、帰りに福田で飲む。

自分の部屋に帰ったら大好きな落語を聞いて「わははは」と笑いながら眠る。

そして次の日も次の日もそれを繰り返し、そして週に一度の休みの日に競艇か競輪か競馬に出かけ、夜はどこかで飲み、どこかのサウナかビジネスホテルに泊まり、次の日の朝には仕事に間に合うように帰る。

それの繰り返し。

それを分かち合う“誰か”いなければ、“友達”も“家族”もいない。

そして60歳も目の前だ。

 

「わしはこうやって死んでいくんやと思うたら、ものすごく淋しくなる時があるんじゃ。まぁ…自業自得なんやけどな。」

 

富永さんが焼酎の水割りを飲みながら呟く。

 

私はそんな富永さんをとても切なく感じて、こう返事をしていた。

 

「…ええよ。援助交際してもええよ。富永さんがそれでいいなら。」

 

私のその言葉を聞いた富永さんは「ほんとか?!」と驚いて、そして嬉しそうに笑った。

そしていつも持ち歩いているセカンドバックから白い封筒を取り出し、私に差し出した。

 

「これ、用意しておいたんじゃ。有里に断られるかもしれんと思いながらも用意しておいたんじゃ。受け取ってくれ。」

 

私はその白い封筒を手に取り、「いくら入れたん?」と聞き返した。

富永さんは「確認してくれ」といい、私は封筒の中身を見た。

 

封筒の中には5万円が入っていた。

 

「え…?これ、多くない?」

 

富永さんの給料がいくらかは知らない。

でも5万円は多い様な気がした。

 

「店に行くにはこれくらいかかるやろが。それにそうやって一緒に酒まで飲んでくれるんやからのぉ。安いくらいじゃのぉ。それでええか?」

 

富永さんから5万円を受け取るのがなんだか心苦しい。

でもこのお金を介さないでSEXをしたらなんだか変な感じがする。

 

「…うーん…」

 

ほんのちょっと前までソープ嬢をやっていたのに、この『援助交際』という言葉に強い抵抗を感じる。

これでいいのか?

 

「わしがこのお金は受け取ってもらいたいんじゃ。そうやなかったら有里を抱けんやろ?のぉ。」

 

悩んでいる私の背中をスッと押す富永さん。

 

「う…ん…」

 

「わしは有里と過ごしたいんじゃ。頼むわ。」

 

富永さんの言葉にもう一度「うん。」と返事をした私は、数十分後にはラブホテルにいた。

 

富永さんは大興奮で私を愛でた。

体中を興奮しながら撫で、何度も何度も「可愛いのぉ」や「有里は綺麗やのぉ」や「わしは有里が大好きなんじゃ」と言った。

 

私は富永さんの大興奮に若干引いていたのだけれど、それでも一生懸命な富永さんをちょっとだけ愛しいと思っていた。

 

富永さんのおちんちんはあまり勃たなかった。

それでもなんとか勃たせようと2人でがんばり、ほんの少しの間だけ挿入することに成功した。

 

息をはぁはぁと切らして、一心不乱に私を抱く富永さん。

私はそんな富永さんの姿をみながら「こんな私になんで?」と暗く冷静になっていく自分を見る。

 

結局射精にまで行きつくことができなかった富永さんは、汗だくになってベッドに倒れこんだ。

 

「はぁはぁはぁ…。あかんのぉ。わしはあかんのぉ。悪いのぉ。有里をどうしたら気持ち良くさせられるのかわからんのぉ…」

 

天井を見上げながら富永さんはそう言った。

私はその言葉を聞いて「…ちょっと…ウザい…」と思っていた。

 

富永さんの愛撫はまるで気持ちよくなく、そして一生懸命すぎて痛かった。

カラダが痛かったんじゃなくて心が痛かったんだけど。

 

私は「…じゃあ…シャワー浴びて帰るね。」と言って起き上がった。

なんだか富永さんと一晩過ごしたくないと思ったから。

 

「帰るのか?そうかぁ。また会えるかのぉ?」

 

富永さんのことは好きだ。

一緒に酒を飲んで話すのは好き。

この人のことは好きだし、愛すべき人だと思う。

だから私はこう答えた。

 

「うん。また会おうな。一緒に飲もう。」

 

「うん。うん。そうやな。…わしはまた援助交際をお願いしたいけど…それはどうなんじゃ?」

 

富永さんはお店での顔とまるで違う顔で私に懇願している。

すがるような目をしている。

私はその富永さんの顔を見てガッカリしていた。

でもそれと同時に『同情』のような感情が湧き、スッと立ち上がってこう言った。

 

「ええよ。富永さんがそうしたいなら。」

 

 

私は身支度を整え「またね。」と言い、ラブホテルを後にした。

白い封筒をカバンに入れて。

 

富永さんが“シャトークイーンの店長”じゃなくなった日だった。

 

「ふぅー…」

 

タクシーの後部座席で溜息をつく私。

ガッカリしていた。

そして切ない気持ちでいっぱいだった。

 

あのままの富永さんでいてほしかったなぁ。

私の知っている富永さんのままでいてほしかったなぁ。

 

なんだかいたたまれない気持ちでタクシーの窓から景色を見ていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

この後私は富永さんと3回ほど飲みに行き、その度に『援助交際』をします。

でも切なさと虚しさに耐えられなくなり、お断りをして結局私の電話番号も変えてしまうという行動にでました。

富永さんは「私のカラダが忘れられない」と言いながら、最後まで私にお願いをしていました。

もうね、それ自体が切なくてね。

 

今富永さんがどこでどうしているのか、私は知りません。

でもとてもお世話になったし、今でも思い出すと「ふふ」と笑ってしまう思い出の方が多い。

 

淋しかったんだろうな。

私もその時淋しかったし、それが痛いほどわかってしまったんだろうと思います。

 

 

てことで!

 

『富永さんは有里ちゃんを抱くことができた!』

 

でしたー!

 

どう?

どう思った?

 

 

そうそう。

こんな物が出てきたから載せちゃおう。

こういうの載せるとリアルに感じませんか?笑

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私の記憶では『帰ってから開けて♡』だったのですが、『♡』なんてついてなかったことに驚いております。笑

記憶って曖昧なのね。

 

 

また書きますね。

質問もよかったらどうぞ。

 

 

 

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はじめに。 - 私のコト

コラム~有里ちゃんこぼれ話①~

 

みなさんこんにちは。

過去有里ちゃんだった(と思われる)ゆっきぃです。

 

これから何話かに渡って、連載の時に書けなかった話しや取りこぼしたエピソードを書いていきたいなぁと思っております。

面白いかどうかわかりませんが、「あー!これ書いておけばよかったー!」と私が思った出来事や、「これってどうなの?」という質問なんかに答えていこうかと考えています。

 

もし「これもっと知りたい!」や「この時どう思ったん?」とかの書いて欲しいことがある方がいらっしゃったらメッセージやコメント欄にどうぞ。

書けるかどうかわかりませんが頑張ります。

(批判とかチャカしたようなコメントはいりませんよー。)

 

さて今回はずーーっと読んでくださったMさんからの質問に答える形で書いていこうかな。

 

Mさんからの質問は

 

『中絶手術後、剃毛による仕事への支障はあったのか?』

『有里ちゃん専用電話を持った富永さんは結局有里ちゃんを抱けたのか?』

 

でした。

 

この『剃毛』については書こうと思ってたのに忘れちゃったんですよー。

この質問をくれたのは女優さんもやってらっしゃる素敵な女性。

さすが、目のつけどころが違うっ!!笑

 

まず『剃毛問題』。(←言い方。

 

有里ちゃんは中絶手術をして1週間ほどで仕事に復帰いたします。

さて、シモの毛を綺麗に剃られてしまった有里ちゃんの1週間後のアソコはどうなっていると思います?

 

そう。

 

ジャリジャリ。

ジャリジャリなのです。

 

悩みましたよー。

これ、お客さんどうなの?って。

コバくんにはどうにでも言えるからなんとも思っていませんでしたけどね。

 

ソープ嬢はマットでも椅子洗いでもオマタをいろんなところにこすりつけます。

これを『タワシ洗い』と言うんですが、この時点で小娘有里ちゃんのオマタにはタワシがありません。

ただジャリジャリしているだけだし、これが気持ちいいとはいえない…んじゃないかと思ってました。

まぁ『タワシ洗い』事態も気持ちいいかどうかわかりませんけど。笑

 

でも、この私のオマタの毛が生えそろうのを待って仕事を休むなんてなんだか嫌だ。

 

うーん…

どうしよう…

 

そこで有里ちゃんは賭けにでます。

 

お客さんになんて言ったと思います?

 

これってお客さんにとってどうなの?と思いながら、有里ちゃんはこんなセリフを用意しました。

 

「前にお客さんにどうしても!と頼まれて、毛を剃られちゃったんだぁ。だから今こんななんだけど…大丈夫ですかぁ?」

 

そう。

架空のお客さんに頼み込まれて毛を剃らせたという設定を用意したんです。

 

このセリフを用意しながらも小娘は考えます。

 

お客さんは他のお客さんのことを匂わせられるのってどうなんだろう?と。

 

『他のお客さんに剃られちゃった』と聞いて、どう思うのだろうか?と。

 

もしかしたら笑ってくれるかもしれない。

もしかしたら「へー!そんなこというお客さんいるんだー!」って話しがはずむかもしれない。

 

でも逆に「そんなん嫌や」と言われるかもしれない。

もしかしたらもう来てくれなくなるかもしれない。

 

うーん…と頭をひねって考えました。

他になんかいい方法ないかとも考えました。

 

でも小娘の頭ではこれ以外考えられなかったのです!

 

さあ!賭け本番!

内心ドキドキしながら、でも平常心を装いながら、目の前のお客さんに打ち明けます。

 

「あんな…実は他のお客さんに前にどうしても剃らせてくれって懇願されてな…今こんなんやねん(*´Д`)これ、大丈夫ですか?あかんかなぁ?」

 

ちょっと恥ずかしがりながら、そしてちょっと申し訳なさそうに言う小娘有里。

内心バクバクしながら。

 

さあ!

この賭け、どう出る?!

 

 

 

「え?!…へーーー!そんなことがあるんやぁ~。それは難儀やったなぁー!そいつ変態やなぁ。(;'∀')別にかまへんよ。ていうかおもろいなぁ。」

 

 

 

小娘はホッと胸を撫で下ろし、心の中でガッツポーズをとりました。

そしてジャリジャリのオマタを駆使してサービスを施したのであります。

 

お客さんは思ったよりも喜んでくれて、「初めての感触やなぁー!」と言っておりました。

 

私はちゃんと私のオマタが『タワシ』に戻るまで、そのバクバクの告白を続けたのですが、そのお客さんだけでなく概ねどのお客さんも満足してくれる、もしくはなんとも気にしていない様子でした。

 

そう!

小娘は賭けに勝ったのです!!

 

ということで、Mさんの最初の質問の答えはこうです。

 

『剃毛後はお仕事に支障が出ると思っていたけれど、結局支障にはならず、案外喜ばれた。』

 

そして小娘のオマタは順調に『タワシ化』していったのでございます。

 

あはは(;'∀')なんのこっちゃ。

 

 

今回はここまで。

次回は『有里ちゃん専用電話を持った富永さんは結局有里ちゃんを抱けたのか?』の質問に答えていきます!

どう?

どうだと思います?

 

では。

お楽しみにー!

 

 

 

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はじめに。 - 私のコト

 

あとがき

 

最後までお読みくださったみなさま。

ほんとにほんとにありがとうございます!!

こんなに長いお話を読んでくださったなんてとてもありがたいです。

 

いかがでしたでしょうか?

この物語を読んで貴方は何を感じ、どんな時間を過ごしたのでしょうか?

 

このお話は私の幼少期から22歳までのお話し。

主に21歳から22歳までに体験した雄琴ソープランドでの出来事を綴っております。

登場人物の名前や建物などの固有名称はほとんど仮名を用いていますが(たまーにホントの名前だったりしてます^^;)、ほぼノンフィクションです。

ただ、この物語は全て私の記憶を紐解いて書いているものですので、時系列が違っていたり、セリフは私が作り上げたものが入っているかもしれません。

ですが、起こったエピソードや大まかな背景は全て実際に起こった&私が体験したことばかりです。

 

この物語はかなり前からずっと書きたいと思い続けていたものなのですが、内容が内容だけに書き始めるのにとても勇気がいりました。

私には現在7歳の娘がいて、そして最愛の夫がいます。

自分の母親が過去にソープ嬢をやっていたことを娘がどう思うのか。

そして最愛の旦那さんは私の過去を全部知ってはいるものの、これだけリアルに私が体験をしたことを知ったらどう思うのか。

そして読んで下さった方々が批判的な反応をしたら、私は、家族は、どうなってしまうのだろうか。

そんなことをたくさんたくさん考えました。

でも、やっぱり私は私の体験を面白いと感じていて、『書きたい!』と思っていたのでした。

 

そんな私を強く後押ししてくれたのは最愛の旦那さま、亮一さんです。

 

『ゆっきぃが書きたいなら書いたらいいよ。俺がそれをどう思おうがそれは俺の問題でしょ。』

 

亮一さんのこの言葉。

冷たく聞こえるでしょうか?

私にはものすごく優しく響きました。

 

『私が面白いと思っていて、書きたいなら書いたらいい。誰がそれをどう思おうとそれはその人の問題だよ。』

 

私にはそう聞こえました。

 

そんな言葉を受け、ドキドキしながら書き始めた私はいつの間にかこの自分の過去の物語に没頭し始め、まるで別人のことを書いてるような気持ちになりました。

小娘有里がまだこの世に生きているかのような錯覚に陥りました。

そして私は私の過去をとても愛しく感じ、小娘有里のことが大好きになりました。

私は私のことが大嫌いだった過去を大好きになったのです。

 

『私は私のことが大嫌いだった過去をそのまま大好きになった』のです。

 

これもひとえに温かい目で読んで下さった貴方のお陰です。

この文章を読んで下さっている貴方のお陰なのです。

 

ほんとうにありがとうございます。

 

この後小娘がどうなっていったのかが気になると何人もの方に言われました。

今の私にどうやってなっていったのかが一番気になる。と。

 

私も気になるーーー!笑

 

この後のお話を書くかどうかはまだ決めておりません。

もし『書いて欲しい!』と思った方はメッセージ下さいね。

もしかしたら貴方の一言で書くかもしれませんので。笑

 

今私はとても幸せに過ごしております。

小娘有里はこの後、のたうち回って悩みまくってたくさん泣いて転げまわったけれど、

こうやって幸せに生きております。

 

貴方の今現在はどんな感じでしょうか?

今どんな感じでも大丈夫。

 

だってこんなめっちゃくちゃな過去を過ごした私がこうやって幸せに過ごしているんですから。

 

こうやってこのお話を書き上げられたことに感動を覚えながら、そしてこの文章を読んで下さっている貴方の幸せを願いながら、あとがきを終えたいと思います。

 

またぜひお会いしましょう。

心から感謝しております。

 

もう一度。

ありがとうございました!!

 

ゆっきぃ

 

 

 

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206~最終話~

 

その日の夜。

コバくんは上機嫌で帰ってきた。

 

「ゆきえ。俺軽トラ借りよう思ってる。今度の部屋はここより狭いしゆきえの物だけになるやろ?そやからいらんもんは捨てて、俺のもんは持って帰るからそんなに荷物ないと思うんや。引っ越し屋さん頼むよりそっちのが安く上がるし、俺、ゆきえと2人でやりたいと思ってな。」

 

コバくんはそう言って引っ越しの計画を話し始めた。

すでに軽トラを借りるツテも見付けていて、もう従わざるおえないような状態になっている。

というよりも、やっぱり私は引っ越し自体が他人事で、コバくんの提案も「あ、うん。」としか言えないでいた。

 

「俺、全部頑張るから。ゆきえは重いもんとか持たんでええし。それでええかな?」

 

「あ、うん。でも…コバくん大変やん。ええの?」

 

「俺がそうしたいの。ゆきえと2人でやりたいんや。」

 

「うん…そうなんや。わかった。」

 

「じゃいつ引っ越すか決めよう。えーと、リフォームが終わるのが今の住居人が出て行ってから2日後くらいや言うてたから…俺の休みを利用して…」

 

コバくんはカレンダーを見ながら次々といろんなことを決めていく。

私は「あ、うん。」と言っているだけだ。

 

流れて行く。

私の目の前をいろんなことが流れていく。

 

「じゃ、ゆきえはここの部屋の解約日を大家さんに連絡しておいてくれる?」

 

上の空の私にコバくんが顔を近づけて聞いてきた。

 

「え?あ、うん。わかった。」

 

「ゆきえ?大丈夫?」

 

コバくんが私の顔を覗き込んで聞く。

 

大丈夫かって?

私が?

…そんなのわからないよ。

そもそも『大丈夫』ってなんだろう。

 

「うん。大丈夫やで。」

 

私はまた嘘をつく。

胸が痛い。

そして不安だ。

シャトークイーンに帰りたい。

もう一度有里ちゃんに戻りたい。

そう思う一方で、新しい暮らしをほんの少しだけ楽しみにしている自分がいる。

 

大きな変化が私に起こっていることがわかる。

でもこの変化は私が起こしているのではない。

滋賀県に来た時は『私が』やっていた。

でも今回は『私ではない誰か』がやっている。

それはコバくんなんだけれど。

 

誰かに動かされるという居心地の悪さと自分の無力感を味わい、私の思考は追いつけなくなっていた。

 

一度死んだ私がもう一度生きる。

そのための私の気力が追い付かない。

 

やりたかったことをやると決めたはずなのに、ルールも決めたはずなのに、私は有里ちゃんの残像を捨てきれない。

そして『生きる』がわからないままだ。

 

そんな私を知ってか知らずか、コバくんは私を置き去りにして話しをどんどん進めていた。

 

 

引っ越しの日取りを決めた後、コバくんはどんどん動いた。

使いづらいベッドを捨て、私が買った不要になったエアコンを友人に格安で売り、自分の荷物をほんの少しだけ残して実家に持ち帰った。

 

私は言われた通りに大家さんに連絡を入れ、段ボールをかき集めてガムテープを購入した。

 

 

新しい部屋の契約はすぐに終わり、部屋の内覧をしないまま引っ越し当日を迎えた。

 

「ゆきえ!これ運べる?」

「ゆきえはこれまとめて。俺はこれ運んじゃうから。」

「あ、これはもう捨てていいんちゃう?いる?」

「あー!これ持って帰るの忘れてたー!」

 

汗だくになりながら動き回るコバくん。

私はコバくんの指示通り荷物をまとめ、あまり重くないものを運んだ。

 

自分の部屋がどんどん殺風景になっていく。

 

2人で汗だくになりながら何度も往復して荷物を軽トラに積んでいく。

何も考えず、ただただ指示通りに動き、荷物を運ぶ。

 

何度往復しただろう。

私の部屋だった場所がいつの間にかガランとした空洞になっていた。

 

何もない。

カーテンすらない。

ただの空間。

 

私はそのかつて私の部屋だった空間に立ちすくみ、ボーっと見回した。

 

「…あぁ…こんなに広かったんだぁ…」

 

1人でつぶやく。

コバくんは下で荷物を積み上げていてまだ戻って来ない。

 

この部屋を契約した時のことを思いだす。

あの時『花』のお姉さんが声をかけてくれなかったらこの部屋には住めなかったんだ。

そして『花』のボーイさんや田之倉さんが荷物を運んでくれたから、すぐにここで暮らせたんだ。

そして原さんが家具や調理器具を譲ってくれたからこの部屋が出来あがったんだ。

安いカーテンやソファーをとりあえず買い揃え、それから少しずつ荷物が増えていったんだ。

 

いろんなことが絡み合い、この部屋が出来あがり、そしてめちゃくちゃだったとはいえ『生活』が成り立ったんだ。

 

短い間だったけど、この部屋には濃密な思い出が詰まり過ぎている。

 

ガランとした空間を見つめ、私は溜息をついた。

 

「…ありがたかったなぁ…」

 

いろんな人に助けられ、ここまで来たんだと再確認する。

そして今もコバくんに助けられて私は移動していく。

 

「…ありがとうございました!」

 

私は何もない空間に深々と頭を下げて、お礼を言った。

 

「何してるん?」

 

その時コバくんが私の後ろで声をかけた。

 

「あ…なんかお礼が言いたくなって頭下げてた。あはは…恥ずかしいー!変なとこみられちゃったな。ははは…」

 

私は恥ずかしくて照れ隠しに笑った。

 

「…恥ずかしないわ。そうやな。俺もお礼言っとこう。俺もたくさんお世話になったから。ありがとうございましたー!!」

 

コバくんは私を笑うことなく一緒に頭を深々と下げた。

 

「写真撮っておこう。きっと数年後には懐かしく見てるで。」

 

コバくんはデジカメを取り出し写真を撮った。

いろんな角度からガランとした部屋を撮る。

 

「ゆきえも映ってー!ほら、こっち向いてー!」

 

 

ひとしきり写真を撮り、大家さんに鍵を渡して挨拶をする。

 

「綺麗に使ってくれてありがとうねぇ。」

 

大家さんはニコニコ笑いながら私にそう言った。

 

「そんな…お部屋を貸してくれてありがとうございました。ほんとにいい部屋でした。」

 

「そう?うれしいねぇ。今度はどこ行くの?」

 

「あ、兵庫県です。」

 

「そう。がんばって。まだ若いんやから。ねぇ。」

 

大家さんは私がソープ嬢だったということを知っているはずだ。

その人が「頑張って」と言っている。

 

「はい。ありがとございます。」

 

「うん。じゃ、ここは鍵かけんと行っていいから。私はこれで。ゆっくりお部屋とお別れして。な?」

 

大家さんはにこやかな笑顔でそう言うと、部屋を出て行った。

 

私とコバくんは顔を見合わせながら「じゃ、行こうか」と言い合った。

 

部屋のドアをパタンと閉めて、外の廊下の様子を写真に収める。

 

外の景色を目に焼き付け、廊下歩き階段をゆっくりと降りた。

何度ここを往復しただろう。

落胆して登ったり、うきうきしながら降りたり、泣きながら登ったり、仕事に行くのが嫌だと思いながら降りたり…

 

どこを見ても愛しかった。

ここに私の経験と体験のかけらがたくさん落ちている。

 

「ゆきえ?泣いてるん?」

 

「え…?うん。なんか泣けてきた。」

 

私は涙を流した。

あの時の“私”はもういないことが淋しくて泣けてきた。

もう二度と戻れないという事実が、こういうお別れのときに痛いほどわかってしまう。

 

 

「…よぉ頑張ったもんなぁ…」

 

泣きながら軽トラに乗り込み、運転席でコバくんがそう呟いた。

 

「…ううん…きっともっと頑張れたんだよ。私…もっと頑張ればよかった…うー…」

 

この期におよんで後悔している。

もっと頑張れたはずなんだ。

どこまでいっても私は怠け者でだらしない。

 

「そんなことないで。ゆきえはよぉやったよ。だから、これからはもっと楽しんでいいんやで。もっとゆっくりやったらええ。焦らんと、ゆっくり楽しんで。俺はそういうゆきえの姿がみたい。な?しばらくゆっくりしたらええよ。俺、近くにおるから。」

 

コバくんは私の頭をポンポンと撫でながら優しくそう言った。

 

「うぅ…ありがとう…。私…できるかな…生きられるかな…」

 

不安で押しつぶされそうだ。

K氏の元にも戻らない、有里ちゃんでもなくなった、私。

どうやったら生きていけるんだろう。

誰をお手本に生きていったらいいんだろう。

 

「できるって。ゆきえはすごい女なんやから。俺、知ってるで。ゆきえは言い出したら聞かないってこととか、めっちゃ強いってこととか、でも優しいってこととか。

だから大丈夫。ゆっくりやろう。」

 

コバくんは笑いながら、でも強い口調でそう言った。

 

「…うん。…そうやね。ゆっくりな。…それが一番苦手なんやけど。あはははは。ありがとう。」

 

「お!笑った!そうそう!笑いながら行こうや!ゆきえはすごいんやから!で、そのすごい女を好きになった俺もすごいんやから!なー?」

 

「あははは。そうやね。行こう行こう。」

 

「もうお別れせんでいいか?車、出していい?」

 

コバくんは優しい口調で私に聞いた。

 

「え?…ちょっと待って。」

 

私はもう一度軽トラから降り、周りの景色をぐるっと見回した。

そして息を一回吐き、軽トラの助手席に戻った。

 

「相変わらず田舎だった!あははは。」

 

涙の跡をそのままにしながら、私は笑いながらコバくんにそう言った。

 

「そうやな!田舎やな!あははは。」

 

「うん。でも…めっちゃいいとこだった!一生忘れられない場所になった!」

 

「そうやな。俺もやで。」

 

「じゃ、行こうか。しゅっぱーつ!」

 

「おう!しゅっぱーつ!!」

 

コバくんは軽トラのエンジンをかけ、アクセルを踏んだ。

 

「ばいばーい!」

 

私は窓を全開にしてマンションに向かって大きく手を振った。

 

何もない国道を走る。

風が気持ちいい。

 

私は全開の窓から入ってくる風を受けながら、遠くなっていく見慣れた風景を眺めていた。

 

よかったな。

ここに来てよかったな。

 

これからどうなるかまるでわからないけど、今わかっているのは『ここに来てよかった』と思っていることだけだ。

きっと私はこれからのたうちまわるんだろう。

きっと私はこれから悩み、苦しむんだろう。

でも今はそんなことは忘れてこの時間を感じよう。

 

ここに来てよかったなぁ。

 

「…ふふ…」

 

全開の窓から顔を少し出し、思い出し笑いをする。

 

「なに笑ってるん?」

 

つられて笑いながらコバくんが聞く。

 

「ん?ふふ…面白いこと、たくさんあったなぁと思って。」

 

「え?…そうかぁ。」

 

「うん。…私、今軽トラ乗ってるんだねぇ。ふふふ。面白い。」

 

「うん?…そうやな。あはは。俺、なんで今軽トラ運転してるんやろ?あはは。」

 

「コバくんどうしたん?なんで軽トラ運転してるん?あはははは。面白いなぁ。」

 

「あははははは。」

 

「あははははは。」

 

 

軽トラの中、2人で笑う。

私を兵庫県に運びながら。

私をどこかに運びながら。

 

 

小娘有里は滋賀県雄琴と『有里』という名前に別れを告げて、次の場所で生きていく。

のたうち回りながら、悩みながら、これから『生きる』を学んでいくことになる。

 

小娘有里が『幸せ』を知ることになるのはここからもっともっと先の話し。

 

笑いながら次の場所に移動している小娘はきっとその場所でもたくさん笑う。

泣いても悩んでも、きっと笑うことになる。

それが『幸せ』へと続くキーポイントだということを全く知らないのに。

 

 

 

 

 

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はじめに。 - 私のコト

205

 

翌日、私は待ち合わせの時間に遅れないように身支度を整え、初めて行く阪急塚口駅へ向かった。

 

比叡山坂本と違って人が多い。

そして街の『色』がカラフルに見えた。

 

「ゆきえー。こっちこっちー。」

 

駅前できょろきょろしているとコバくんが手を振り私を呼んだ。

 

「迷わへんかった?」

 

歩き出しながらコバくんが優しい笑顔で私に聞いた。

 

「うん。大丈夫。」

 

初めての場所はわくわくする。

もしかしたら私はここに住むかもしれないんだ。

 

「すぐやから。ここからすぐやで。」

 

横断歩道を渡り、すぐ先にローソンが見える。

 

「あ、あれあれ。ローソンの上やねん。」

 

ローソンの上は茶色の綺麗なマンションになっていた。

そこがコバくんが薦めている場所だった。

 

「うわ。ほんまに駅から近いんやねぇ。」

 

「うん。すぐやろ?それでこの家賃はなかなかないと思うんや。」

 

マンションの前に着くと、不動産屋の方が待っていてくれた。

 

「あ、どうもー。○○不動産の者です。よろしくお願いします。」

 

スーツを着た若い男性が深々と頭を下げた。

 

「急にすんません。こちらがこの部屋を検討している方です。」

 

コバくんが不動産屋さんに私を紹介する。

 

「あ、よろしくお願いします。」

 

私はどこか他人事のように感じながら挨拶をした。

 

「あのぉ~、まだ候補のお部屋に人が住んでましてねぇ。明後日には部屋を出るんですよ。その方が。でもまだいらっしゃるんで内覧ができないんですよぉ。」

 

スーツの男性が申し訳なさそうに言う。

 

部屋の中が見られない?

えー…

 

「え?そうなん?あれ?昨日中見せてもらえるかもって言うてましたよね?」

 

コバくんが驚きながら聞く。

 

「あー…そうなんですけど…住んでらっしゃる方がやっぱり部屋がぐちゃぐちゃだから無理だとおっしゃって…」

 

「えー!…まぁしゃーないか…ゆきえ、どないする?」

 

え…ーと…

中が見られない。

で?どうする?と。

 

「中は凄い綺麗ですよ。もちろん今住んでらっしゃる方がでましたらリフォームもきちんとしますし。間取りもいいですし日当たりもいいですよ!」

 

不動産屋の若い男性が頑張って薦めている。

 

「この家賃では珍しくトイレとお風呂も別ですし、なんといっても駅が近いですからねぇ。この物件はすぐに埋まってしまうんですよ。なので決めるなら今かと思います。

手付だけしておいてもらえれば押さえておきますよ!このレベルの物件はなかなかないですよー。」

 

駅は…すごく近い。

お風呂とトイレが別なのはありがたいし、それがいい。

日当たりがいいと言っている。

…うーん…

 

「敷金と礼金は一ヶ月ずつなんやな?仲介手数料は?」

 

コバくんが話しを薦めている。

私をこの部屋に住まわせたい気持ちが強いことがわかる。

 

「はい。手数料は一ヶ月分です。で!オーナーさんが今決めてくれれば礼金はいらないと言っています!お得ですよねぇー。」

 

「え?そうなん?それすごいな。ゆきえ、どない?」

 

「…うーん…そうやねぇ。コバくんはここがいいと思ってるん?」

 

「…うん。俺はここがいいと思ってるし、はよ決めたいと思ってる。外観も綺麗そうやし、リフォームもしてくれるいうてるから…どうかな?」

 

私たちがごにょごにょと話していると不動産屋の若い男性が数枚の写真を見せてきた。

 

「こちらが内観です!綺麗じゃないですか?」

 

マンションの内部を映した写真。

確かに綺麗だし日当たりも良さそうだった。

 

「…うん。綺麗やね。」

 

私は新しい街に来て、綺麗なマンションの外観を見て、心が揺らいでいた。

そしてすぐにでもこの身をこの場所に移したくなってきていた。

新しい生活を考えるとわくわくする。

この場所で1人暮らしができるかと思うと、なんだか明るい未来が待っているような気がしてくる。

 

「…ここに決めない?」

 

コバくんが私の背中を押す。

 

他の場所を見てるヒマなんかない。

私は早く自分の居場所を確保したいと思っていた。

そして早く滋賀県から出たいと思っていた。

 

 

「…うん。そうやね。ここにするわ。」

 

内覧をしていない不安はあったけど、もしなにかがあったらどうにかしよう。

場所に慣れることはできるだろう。

 

「ほんま?ほんまに?いいん?やった!そうしよう!」

 

コバくんは嬉しそうに笑った。

 

「じゃ、ここにします。お願いします。」

 

コバくんが不動産屋の男性に言う。

 

「あ、ありがとうございます!では書類の説明をしますね。」

 

マンションの入口の前でずっと立ち話をしている私たち。

書類の説明も立ったまま聞いているのがなんだかおかしかった。

 

「で、ここに保証人さまのお名前と印鑑が必要です。保証人さまはどなたか身内の方でお願いしたいのですが大丈夫ですか?」

 

あ…

保証人…

 

すっかり忘れていた。

保証人の存在を。

 

「え…と…どうしょう…」

 

親には連絡したくない。

というかできない。

姉や兄にももちろんできない。

そして連絡したからといって保証人になってくれるわけもない。

 

胸がドキドキする。

私は一人では何もできないことを再確認する。

部屋すら借りられない。

 

なす術もなく、さっきまでわくわくしていた気持ちも萎み、胸の中に冷たい風が吹き抜ける。

 

 

「あ、僕婚約者なんですけど、僕じゃだめですか?」

 

コバくんがふいにそんな事を口にした。

 

「え…と。そうですね。多分…大丈夫だと思います。ちょっと聞いてみますね。」

 

不動産屋の男性がおもむろに電話をかけ始める。

 

 

「コバくん…いいの?保証人なんて…いいの?」

 

小さい声でコバくんに聞く私。

 

「おう。俺がなるで。大丈夫。俺、婚約者やから。ははは。」

 

照れたように鼻を触るコバくん。

申し訳なくて泣きそうだ。

 

「あ、大丈夫みたいです!ではここに婚約者さまのお名前捺印、それから…」

 

いつの間にか保証人の件は片付き、契約に関する話しがどんどん進んでいた。

 

「では書類の方、お願いいたします!で敷金と仲介手数料と最初の一ヶ月分の家賃をここに振り込んで頂けますか?書類は持って来ていただいても郵送でも大丈夫です。」

 

「あ…はい…わかりました…」

 

「すぐやります。よろしくお願いします。」

 

まるでコバくんが部屋を借りるみたいに話しを進めている。

私は契約がほとんど決まっているのに、ずっと他人事のように見ている。

 

「では。わからないことがあったらいつでもご連絡ください。ありがとうございましたー!」

 

不動産屋の男性がにこやかにその場を去った。

私は頭を下げながら、ポカンとしていた。

 

「よかったな。決まって。」

 

コバくんがニコニコしながら私に言った。

 

「え…うん。ありがとう。私、何にもしてない…」

 

ポカンとしたまま答える。

 

「ええやん。これからたくさんいろんなことするんやろ?俺は場所を整えるだけや。あ、ゆきえ。書類書いておいてな。帰ったら保証人の欄に記入するから。」

 

「あ…うん。ほんまにええの?」

 

「ええんやって!俺がやりたいの!あ、それから帰ったら引っ越しのこと話し合おう。いつどうやってやるか考えておくから。な?」

 

「あぁ…うん。そうやね。」

 

「あ、それから敷金とかもろもろ俺が払っておくから。俺かて積み立てとかあるんやで!ゆきえ、K氏にお金たくさん払ってしまったからもうあんまりないやろ?そやからそれだけ払わして。ゆきえはこれからの生活があるんやから。俺はどうにでもなるしな。な?」

 

「え…?」

 

コバくんは引っ越しにかかる諸々を自分が払うと言ってきた。

ニコニコと笑いながら。

 

私はこの人と一緒には住まないと言ったのに。

苦痛だと言ったのに。

 

この人は一体何なんだろう。

 

「そんな…。あかんて。それはあかんやろ。なんで?」

 

私はポカンとしたままコバくんに「あかん」と言った。

目の前で起こっていることに着いて行けず、私はいつまでもポカンとしていた。

 

「あかんくないって。そうさせてや。俺がそれのがいいんやって。ゆきえかてそれのが楽やろ?お金少しでも持ってた方が気持ちが楽やろ?それにその方が思う存分次の仕事を吟味できるやんか。な?」

 

確かにK氏にお金を渡してしまって、手元にあるお金は心もとない金額だけになっていた。

先のことなんて考えていなかったから。

 

「…うん…コバくんがそうしたいん?」

 

「そうやって!俺がそうしたいの!ゆきえには色々お世話になったからな。ゴハンとかお弁当とか。掃除に洗濯やろ?どこかに遊びに行くときもよくゆきえが払ってくれたやんか。俺の高速代を心配してくれたやろ?そやからお返しやで。な?」

 

コバくんは兵庫県から滋賀県まで毎日通っていた。

高速代を払いながら。

その額を私は知らないけど、なんとなく気にして、家賃や光熱費をもらうことはなかったし、どこかに遊びに行くときにも私が先回りして払っていることが多かった。

私の方が格段に稼いでいたから当たり前の話しなんだけれど。

 

「…なんか申し訳ないわ…」

 

いたたまれない。

自分が情けない存在に感じる。

ズルいし小さいし無力だ。

 

私は有里ちゃんじゃなくなって、これからやっていけるのかと不安になっていた。

 

「申し訳なくなんか感じなくてええ。ゆきえはこれからのことを考えたらいいんや。な?じゃ、俺仕事戻らな。また帰ったらゆっくり話そう。帰り気ぃつけてや!」

 

「…うん。わかった。ありがとう。」

 

「ゆきえ!大好きやで!」

 

「んふふ。ありがとう。私もやで。」

 

手を大きく振って歩き出すコバくん。

すごい笑顔だった。

 

「…はぁ…」

 

阪急塚口駅に戻る道。

綺麗な駅前の道を歩きながら、私は今起こった出来事がやっぱり他人事のような気がして心がポカンとしたままだった。

 

この街に住むことになりそうだなぁ…

 

そんなことを思いながらきょろきょろと周りを見回す。

 

私はここで買い物をするのかもしれない。

私はこの道を何度も何度も通るのかもしれない。

 

どこに向かっていくんだろう。

私はどうやって生きていくんだろう。

 

足がちゃんと地に着いていないような感覚のまま私は電車に乗り、自分の部屋に帰って行った。

 

 

 

つづく。

 

 

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206~最終話~ - 私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

 

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