私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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「有里。南はええ奴やろ?」

 

若いボーイさんと理奈さんが帰って、私の隣の席に移動してきた富永さんがトロンとした目で私に聞いた。

 

「うん。おもろい人やな。優しそうやし。」

 

私は笑いながら本心を口にした。

南さんはほんとに優しそうだし、いやらしい感じがまるでないおじさんだった。

なんなら品すら感じるほどの人だ。

 

「そうやろ。あいつは優しいで。」

 

「うん。そうやね。」

 

富永さんがチラッと私の方を見る。

 

「…好きになったらあかんで。」

 

小さな声で呟くように富永さんが言った。

 

「は?なに?何言ってるん?」

 

私は富永さんの顔を覗き込むようにして聞き返した。

 

「いや、南のこと好きになったらあかんでって言うたんや。」

 

はぁ?!

私が?

南さんを?

おじさんのボーイさんですけど?

 

「え?何で?なんでそんなこと言うん?あはは。おかしなこと言うなぁ。」

 

私は富永さんの肩をポン!と叩いて笑った。

 

「笑いごとちゃうで。好きになったん?もう好きになってしまったんか?」

 

富永さんは小さな子供のような口調でボックス席のソファーに深く腰を沈めながらそう言った。

 

「あははは!どうしたん?なに言うてるん?」

 

富永さんの態度がおかしい。

お酒を飲み過ぎてしまったのかもしれない。

 

「…わしな…有里のこと抱きたい思ってるで。」

 

富永さんがソファーに深く座りながら水割りを両手にもって呟いた。

 

は…?

え…?

今なんて?

 

「…え?何?今なんて言うたん?」

 

私はきょとんとした顔で聞き返した。

 

「…わしは有里を抱きたい思うてるで。援助交際でもええんや。あかんか?」

 

拗ねた子供のような顔。

富永さんはチラッと私を見ながら両手で持っている水割りを舐める様に飲んだ。

 

「ほんまに?!私を?!富永さんが?」

 

思ってもみない言葉だった。

富永さんが私を抱きたいと思っていたなんて。

 

「…そうや。あかんか?一回だけでもええんや。…あかんな。わしは店長やもんな。こんなん言うんわし初めてやで。あかんわな。南には内緒やで。あかんわなぁ。」

 

「あかんあかん」と繰り返す富永さんがなんとなく可愛く見える。

そして私はまるで悪い気がしなかった。

むしろ「抱かれてもいいな」という気になっていた。

 

「…びっくりしたわ。富永さんがそんなこと言うなんて思ってもみなかったからなぁ。あはは。」

 

私は笑いながら水割りをグッと飲んだ。

 

「そうか?前からずっと思っとったんやで。気付かんかったか?」

 

チラッと見ながら遠慮がちに話す富永さん。

なんだかちょっとだけ愛しさが湧いてしまう。

 

「気付かんよー。そんなん気付くわけないやろー。」

 

「そうか。で?どうなんや?抱かせてくれるんか?援助交際でもええんや。」

 

…あはは…

富永さんから『援助交際』という言葉がでるなんて…

なんだか笑ってしまう。

 

「えー…と…そうやなぁ…うーん…」

 

子どものようにソファーに座っている富永さんが可愛くて愛しく感じる。

そして『抱かれてみたい』という好奇心がムクムクと湧きあがる。

この人はどんなSEXをするんだろう?

 

「いいよ」と言いかけた時、南さんがトイレから帰ってきた。

 

「なに?なんの話し?富さん、有里ちゃんのこと口説いてたんか?わははは!」

 

南さんは絶対そんなことないと思って言っている。

実際は口説かれてたんだけど。

援助交際をだけどね。

 

「そうやでぇ。帰って来るん早いんじゃ。もう1回トイレに行ってくれぇ。」

 

富永さんはふざけながら南さんにほんとのことを言っている。

南さんは信じてないけど。

 

「なんやぁ!それやったら僕も有里ちゃん口説くわー。じゃ今から口説くで!いくでぇー!」

 

「なにそれ!そんなこと言って口説く人いますかぁ?あははは!」

 

南さんの話にツッコミを入れる私。

なんか今日はおかしなことになっている。

50代のおじさん2人と22歳の私。

面白い。

富永さんの申し出もなんだか面白い。

 

「富さん。こうなったら有里ちゃんを2人占めにしましょう。それしかない。ね?有里ちゃんは2人のもの。ね?そうしよう!わははは!」

 

南さんは酔っぱらって上機嫌だ。

すごく楽しそうだった。

 

「なんじゃそれはー。わしは嫌じゃ。わしは1人占めしたいわ。なんでおっさんと分け合わなあかんのや。のぉ?有里。」

 

富永さんが真剣な顔で私に言う。

 

「そんなん知らんわ!2人ともなに言うてるん?」

 

「もー今日は楽しすぎる!もっと飲もう!ね?有里ちゃん!富さん!」

 

南さんはフラフラになりながら水割りを作っている。

 

「わしは有里と2人で飲みたいわ。のぉ?有里。」

 

富永さんも酔っぱらって遠慮がなくなっている。

南さんはそれを聞いて笑っている。

 

「ちょっと2人とも飲み過ぎやな。そろそろ私は帰るで。」

 

時間を見るともう4時前だった。

 

「え?!有里ちゃんもう帰るの?」

 

「は?もうってもう4時になるで!」

 

「え?そうか?!もうそんなか?!じゃ帰るか。」

 

富永さんがちょっと淋しそうに言う。

 

「うん。まぁくーん!帰るわー!タクシー呼んでー。」

 

私はカウンターの中のまぁくんにそう言った。

 

「え?!ほんまに?もう帰るん?!」

 

南さんがテーブルに身を乗り出して私に聞いた。

 

「うん。もう帰るよ!南さんも帰りぃ。富永さんも帰るやろ?」

 

隣の富永さんの方を向いて肩をポンと叩く。

 

「おう。有里。わしは本気やで。考えておいてくれ。わしは有里が好きなんじゃ。」

 

富永さんが小さな声で私にしか聞こえないように言った。

 

「あはは…あー…うん。ありがとう。わかった。」

 

私はなんて答えていいかわからず、引きつった笑顔で答えた。

 

「え?!なに?今富さんなんて言ったの?抜け駆け?ずるい!!僕も有里ちゃんと内緒話しする!」

 

…あはは…

南さん、相当酔っぱらってるな。

 

「有里ちゃん、タクシー来たでー!」

 

まぁくんが私を呼ぶ。

 

「はーい!じゃ帰るわ。幾ら払えばええ?」

 

私はお財布を取り出し、南さんに聞いた。

 

「え?有里ちゃんは払わんでええの!ね?富さん。」

 

「おう。有里はええよ。」

 

「え?払うよ。なんで?」

 

私がお財布を開けようとすると富さんが「ええが」と言って私の手を止めた。

 

「おっさん2人の相手をここまでしてくれたんやからええんじゃ。帰りぃ。」

 

「あー…ありがとう。またな。」

 

私は富永さんと南さんに「ありがとう。」と言ってトキを出た。

 

 

タクシーに乗り込み、さっきの出来事を思い出す。

 

富永さんがまさかあんなことを言いだすなんて…

 

少し興奮していることに気付き驚く。

 

富永さんに抱かれる…

 

想像するとワクワクする。

今まで想像すらできなかったことだったから。

 

私を抱きたい?

富永さんが?

 

なんか興奮する。

ただの好奇心だけどすごく興奮している自分がいる。

 

「…どうしようかなぁ…」

 

窓の外を見ながら呟く。

私も結構酔っぱらっているみたいだ。

明日また考えよう。

 

 

私は寝ているコバくんを起こさないようにそーっと部屋に戻り、ソファーにゴロンと横になった。

 

わんわんわんわん…

 

耳鳴りがする。

酔っぱらうといつもこうだ。

 

わんわんわんわん…

「わしは有里を抱きたいと思うてるで。」

 

耳鳴りと共に富永さんの言葉が繰り返される。

 

…抱かれちゃおうかな…

 

「ふふっ…」

 

ちょっと笑いながら、そして耳鳴りの音を聞きながら、私は眠りについた。

隣の部屋にコバくんがいることもなんだか面白く感じながら。

 

 

 

つづく。

 

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