私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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コンビニに寄ってもらい、おつまみとお酒を買った。

 

「あー!これ美味しそうやない?」

「ほんまやー。これも食べたいです!」

「奈々ちゃんさっきまで枝豆食べてたやんか!まだ食べるん?!」

「だってー、怖がってたらお腹空いちゃったんですよぉ。えへへ。」

「あ、私これも買おうっと。」

「有里ちゃんはお酒買いすぎやって!あははは。」

「えーやんか。一仕事終えたんやからー。あははは。」

 

 

3人でワーワー言いながら買い物をした。

 

楽しかった。

 

「なんか楽しいなぁ!店入ってこんなんするの初めてやわぁー」

 

理奈さんがほんとに楽しそうにコンビニの袋を抱えている。

 

「みんなで控室に泊まるってなんかいいですねぇー!」

 

奈々ちゃんもすごく嬉しそうだ。

 

私はその2人の姿を見て、今日の大変だった体験も悪くなかったなと思っていた。

 

「有里ちゃん疲れたやろ?大丈夫?」

 

理奈さんが私を気づかってくれる。

 

「あー、うん。大丈夫!理奈さんと奈々ちゃんがおっぱい触らせてくれたらもっと大丈夫になるで。あははは!」

 

「でた!有里ちゃんすぐおっぱい触らせろ言うねんで!変態やろ?!」

 

理奈さんが笑ってる。

 

「なんで?ええやんかー。後でさわらせてね♡奈々ちゃんも♡」

 

私はふざけて奈々ちゃんにそう言った。

 

「え?おっぱい?いいっすよ!私のふにゃふにゃですよ!えへへへ。」

 

「ふにゃふにゃって!おもろいなぁー!あははは!」

 

「奈々ちゃんのおっぱいはふにゃふにゃかぁー!いいやんかー!あはははは!」

 

後部座席と助手席で私たちがそんな会話をしていると、富永さんがボソッと「わしも触らせてくれるか?」と可愛く呟いた。

 

「富永さんがなんか言うとるでー!」

「はー?!触りたいんか?」

「富永さんも触りたいって思うんですか?!」

 

私たちが一斉に突っ込むと、富永さんは「そりゃ触りたいやろがー!」と言った。

 

「そーなんやー!でもあれやろ?私のは触りたいとは思わんやろ?」

 

理奈さんが富永さんに聞く。

 

「お?理奈のおっぱいか?そりゃ触らせてくれるいうなら触りたいわー。そんなもんやで。男なんて。」

 

「えー!私のも触りたいんか?へー!」

 

理奈さんが驚いている。

 

「まぁ理奈は色気はないけどな。それでも触ってええ言うなら触るわ。どうぞー言うてるのに断る奴はおらんやろー!それで断る奴は変態じゃ。」

 

「そうなんやー。」

「へー!おっぱいって触りたいもんなんですねー。」

「そりゃ触りたいやろ!私は揉みしだきたいで。」

「でた!有里ちゃんの変態発言!あははは!」

「有里さん変態ですねー!あははは!」

 

 

車中は終始にぎやかだった。

私はあえてそうしているフシもあった。

そうでもしてなきゃ奴らの記憶にまた飲み込まれる。

 

 

「じゃ、風邪ひかんようにな。ちゃんと寝ぇや。」

 

店の駐車場で富永さんが私たちに言った。

 

「はーい!おやすみなさーい!」

 

「有里。今日はありがとな。」

 

「あ、はい。早めに解約したほうがいいですよ。ほんとに。」

 

私はもう一度念を押した。

あそこに泊まる女の子が今後いないようにしなければ。

 

「おー。社長に言うておくわ。」

「掃除にも行かない方がいいですよ!」

「おー。わかった。」

「おやすみなさい。」

「おう。お疲れさん!」

 

富永さんの車が見えなくなるまで3人で見送った。

 

「さ!飲もうかー!」

 

理奈さんが楽しそうに私たちの腕を組んだ。

理奈さんに腕を組まれるとなんだか嬉しい。

 

「はーい!飲もうー!」

 

 

控室でのお泊り会は楽しかった。

 

深夜のテレビをみんなで観ながらあーでもないこーでもないと他愛もない話しをする。

誰に気を使うことなく話したいことを話して「あはは!」と笑う。

奈々ちゃんがふいに泣いたりして慰めたり、理奈さんが眠そうな顔をしているのを突っ込んだり、私が「奈々ちゃん飲んでる?理奈さんは?お酒持ってこようか?」と言って「有里ちゃんは動きすぎやー!いつも気ぃ使いすぎやでー!あはは!」と笑いながら突っ込まれたり…

 

私は「友達ってこういうことなのかな」とふと思う。

 

私は友達がいない。

学生時代の友達とはいっさい連絡を絶っていたし、そもそも『友達』がなんなのかがわからなかった。

 

理奈さんは私の友達?

奈々ちゃんは?

 

今楽しい時間を過ごしているけどそれが友達ってこと?

 

「有里ちゃん、今度旅行行かへん?」

 

奈々ちゃんがトイレに行っている時、理奈さんが私にそう言った。

 

「え?旅行?」

 

驚いた。

そして嬉しかった。

 

「うん。前から思ってたんや。有里ちゃんとどっか行きたいなぁーって。」

 

え?

前から?

私とどっか行きたいって?

 

私は嬉しすぎて涙が出そうになっているのを隠した。

そして冷静を装って理奈さんにこう言った。

 

「おー!いいねぇ。行こう行こう!どこ行く?」

 

ほんとは飛び上がりたいほど嬉しい。

そしてその言葉だけでもありがたくて泣きそうだ。

「その言葉だけでもうお腹いっぱいです!旅行なんて行かなくてもいいです!!もう充分です!!」と言いながら握手をしてしまいそうなほどの感激だった。

 

「行けても一泊やろ?ちょっと考えよう。なぁー有里ちゃん♡」

 

理奈さんはちょっと酔っぱらっていて上機嫌だ。

私に抱き着いて頭を撫でている。

 

私は理奈さんの背中をポンポンと叩いて「はいはい」とあしらった。

ほんとはこの理奈さんの行為自体も嬉しくて仕方がないのに。

 

「ふわぁ~…もう眠いです…」

 

トイレから戻ってきた奈々ちゃんが眠そうに目をこすりながらそう言った。

 

「あ!そうやね。もう寝ようかー。」

 

私はまだまだ飲み足りなかったけど奈々ちゃんも理奈さんももう眠そうにしている。

 

「うん…私ももう眠いわぁ…」

 

理奈さんがトロトロになりながら言う。

 

「うん。寒くない?奈々ちゃんは?」

 

私はゴロンと横になった理奈さんにブランケットをかけて、奈々ちゃんのお布団を敷くのを手伝った。

 

「あ…有里さんありがとうございます…もうへーきです…おやすみなさいぃ…」

 

「うん。おやすみ。」

 

2人ともすぐにスースーと寝息を立てた。

 

私は控室の電気を消し、テレビの音を小さくした。

音を立てないようにビールのプルトップをゆっくり開けてゴクリと飲む。

 

「はぁ~…」

 

2人の穏やかな寝息を聞きながら、暗い部屋でテレビのチカチカした光を浴びてビールを飲む。

全くルールのわからない、どこの国同士がやっているかもわからないサッカーの試合をジッと見る。

 

「ふぅ…」

 

急に淋しさに襲われる。

自分の根底に流れている、避けようがない孤独を感じる。

 

友達がいたって孤独なんだな。

部屋で彼が待っていようと孤独なんだな。

 

私はどこまでいっても孤独なんだ。

 

そんなことを酔っぱらった頭で考えゴクゴクとビールを飲んだ。

 

「もう寝るか…」

 

独り言を言い、テレビを消して炬燵に潜り込む。

 

たまに控室に泊まるのもいいなぁ…

 

そんなことを思いながら眠りについた。

 

 

 

それから数日後、シャトークイーンに新しい女の子がもう一人入ってきた。

名前は加奈さん。

沖縄からやってきた彼女は色が浅黒く、髪はショートカットで子どもみたいな女性だった。

加奈さんはお世辞にも可愛いとはいえない顔だった。

目は細く、鼻はダンゴっ鼻。

口も大きくて眉毛もバサバサとしていた。

 

「あ、すいません。あ、よろしくおねがいします。あ、はい。あ、すいません。」

 

おどおどとした彼女はいつも笑ってるような顔をしながら「すいません」を連発していた。

 

 

「沖縄にはスカウトマンがたくさんおるからなぁ。加奈もスカウトが連れてきたんじゃ。ぶさいくやけどええ奴やろ?あいつは働くと思うでぇ。子どもも2人おるしな。働かなあかんやろ。」

 

富永さんは加奈さんのことをそう教えてくれた。

 

沖縄…

スカウト…

 

私はすぐに麗さんのことを思いだした。

 

そして加奈さんには子供が2人もいる。

 

なんだか嫌な予感がしていた。

 

「有里さん、いろいろ宜しくおねがいします。あ、すいません。私、あ、すいません。」

 

笑顔で「すいません」を連発している彼女をなんとなくほっとけなく感じている私。

いつも笑顔だけどものすごく暗い何かを感じる。

 

加奈さんとじっくり話が出来たのは加奈さんが入店してから1週間が過ぎようとしている時だった。

そこで私はまた憤りを感じることになる。

 

 

つづく。

 

 

 

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142 - 私のコト

 

 

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