私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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奈々ちゃんと泣きながらの会話をしてから数日後。

 

私は出勤してすぐにフリーのお客さんについた。

 

 

「有里。なんやおもろそうなおっさんやでぇ。ぐふふ。」

 

チケットを受け取るとき、ニヤニヤしながら富永さんが私にそう言った。

 

あの富永さんの笑い方…

うーん…

なんか嫌な予感がするなぁ…

 

そう思いながら待合室の前でひざまづき、お客さんを待つ。

 

ドキドキしながら待っているとフラ~っと細身の男性が待合室から出てきた。

 

「いらっしゃいませ。お二階です。」

 

笑顔でその男性を見上げる。

 

え?

えーと…

 

その男性はひょろひょろしたおじさんで、無精ひげを生やしていた。

眼鏡の奥の目はうつろでなんだかフラフラとしている。

私がびっくりしたのはそのおじさんの口の周りだ。

 

そのおじさんの口のまわりには卵サンドの卵が程よく?付いていた。

そしてそれは程よく?カピカピに乾いていた。

 

「うん。」

 

おじさんはそう言いながら頷き、フラフラと二階へ上がろうとした。

私はおじさんの腰のあたりを支えるように階段を上がった。

 

薄いベージュのハーフパンツに白いTシャツ。

そのTシャツの上に薄い水色のシャツを重ね着している。

無造作だけどボサボサなわけではない、少しだけ黒髪が混ざった白髪。

黒縁で可愛い形の眼鏡をかけている。

 

おじさんはフラフラだし卵サンドのカスを口の周りに付けてはいるものの、見た目はちょっとおしゃれな感じがした。

 

酒臭いな…

 

階段を上がりながら気付く。

 

「こちらです。どうぞ。スリッパはここで脱いでください。」

 

不安な気持ちを隠し、にこやかに個室に案内する。

 

「うん。」

 

おじさんは私の方をチラッと見てからスリッパを脱ぎ、個室に上がった。

 

「有里と申します。よろしくお願いします。」

 

私は正座をして丁寧にお辞儀をした。

 

「うん。うん?あ…え?なんやて?」

 

おじさんは私の名前がわからなかったらしい。

 

「あ・り・です。有里です。」

 

「え?あり?あの小さい蟻か?ちいさかないけどなぁ。んふふ。」

 

でた。

これ、おじさんたちに何回言われたことか。

 

「違いますよぉー。字が違いますぅ。まぁ確かに私は小さくはないですけどねぇ。」

 

「んははは。有里か。有里やな。わかった。」

 

おじさんはニヤニヤと笑いながら何度も「有里やな。」と確認していた。

 

「お酒飲もうか。」

 

おじさんは私にお酒を催促した。

 

「はい。何がいいですか?ビールですか?そこにウイスキーとブランデーも用意してますけど。」

 

「んー…ビールやな。ビール。」

 

「はい。ちょっとお待ちくださいね。」

 

フラフラしている割にはちゃんと会話が成立したので少しだけ安心した。

 

おじさんは運ばれてきたビールをゴクゴクと美味しそうに飲み干した。

 

「有里…?ん?有里やな?も飲んだらええ。」

 

おじさんは私にビールをすすめた。

 

「え?いいんですか?やったぁー。いただきます!」

 

私もビールをゴクゴクと飲み干す。

 

「おー。ええやんかぁ。もっと飲みぃ。」

 

おじさんは私の飲みっぷりに喜んだ。

私は口元の卵サンドのカピカピのカスがずっと気になっていた。

 

「お風呂…入りますよね?」

 

おじさんの酒の飲みっぷりを見ていると、ずっと座って飲み続けてしまいそうだった。

私はそれでもいいんだけど、最後に時間が少なくなってきたことを理由にこのままSEXをするような流れだけは嫌だった。

だって…卵サンドが…

 

「ん?まだええわ。」

 

おじさんはニヤニヤしながら酒を飲み続ける。

 

「そう…ですか?でも一応溜めておきますね。」

 

私はお風呂の準備だけはすませてしまおうと思い、お風呂を溜めた。

そしてそのついでにタオルをちょっとだけ濡らしておじさんの元に戻った。

 

「有里…?やんな?ウイスキーの水割り飲もうか。」

 

「はい。今注文しますね。」

 

私はフロントに水割りセットを頼んだ。

 

「ちょっとお待ちくださいね。」

 

そう言いながらおじさんが座っている近くに行き、「ちょっと失礼しますねー。」と言いながらさっき濡らしてきたタオルでおじさんの口の周りを拭いた。

 

「ん?なんや?どないしたんや?」

 

おじさんは何の抵抗もなく、私にされるがままの状態だった。

手はだらんと下におろしたまま、顔も私が動かす方向に向け、なんなら私の方に顎を突き出して「拭いてー」の状態になっていた。

 

「卵サンド…食べました?んふふ。」

 

私はおじさんの口の周りを拭きながら聞いた。

 

「へ?食べたでぇ。さっきな喫茶店寄ったんや。ここに来る前な。そんでー…あのぉー…そうそう。卵サンドとー…あと…そうそうビール飲んだんや。」

 

おじさんは私に口の周りを拭かれながら子供みたいに答えた。

 

「付いてましたよ。卵サンド。んふふ。」

 

「んはは。そうか。」

 

運ばれてきた水割りセットでウイスキーの水割りを作り、おじさんと一緒に飲んだ。

しばらく沈黙と会話を繰り返しながら水割りを飲んでいると「有里…?やったな?ん?有里やろ?まだ時間あるか?」とおじさんが聞いてきた。

 

個室に入ってやったことといえば、ビールを飲んでお風呂を溜めて口の周りを拭いて水割りを飲んだだけだ。

まだカラダにも触れていないしお風呂にも入っていない。

 

この時点で残りの時間はあと30分だった。

 

何度か「お風呂入りますか?」や「そろそろ身体洗いますか?」の打診はした。

でもその度に「まだええわ」の答が返ってきていたので私はあきらめて一緒に酒を飲んでいたのだ。

 

「え…と、あと30分です。どうします?お風呂そろそろ入りますか?」

 

これからSEXするのかなぁ…

なんか慌ただしくて嫌だなぁ…

 

私はお酒を飲んで少しふわっとしていた。

もうマットもやりたくない。

まぁ言われたらやるしかないんだけど。

 

「そやなぁ。延長できるか?」

 

おじさんが延長を申し出てきた。

 

「え?あーじゃあ聞いてみますね。延長は30分になりますけど…いいですか?」

 

私がそう聞くとおじさんはフルフルと震える手でお酒を持ち上げながらこう答えた。

 

「ん?もう90分にしよか。」

 

え?

あと90分?

マジで?!

 

「えー…と。はい。聞いてみますね。」

 

だいたい延長する人は30分の一回だけだ。

今まで延長を言って来た人はたくさんいるけど90分も延長すると言い出した人は初めてだった。

 

特に話しが盛り上がるわけではないし、手もフルフル震えているおじさんとあと90分(+まだ残っている30分。)も一緒にいなきゃいけないんだと思うと気が重かった。

 

次の予約入っててくれ!と願いながらフロントにコール。

 

「あの…延長お願いします。えと、90分の延長ってできます?」

 

「え?!90分?そりゃ豪気やのぉ。それやったら延長やなくて『切り返し』にできると言うてくれ。」

 

フロントの富永さんが受話器の向こうでそんなことを言った。

 

「え?切り返し…ってなんですか?」

 

初めて聞く言葉だった。

 

「30分の延長を3回分よりも、もう一回90分コースを選ぶっていう方がお得なんや。それを『切り返し』っていうんや。」

 

30分の延長料金は1万3千円。

それを3回分だと3万9千円。

だけど切り返しにすると3万5千円だ。

 

「はーなるほど。わかりました。それで…できるんですか?」

 

「ん?ちょっと待てよ。んー…」

 

受話器の向こうで富永さんが予約票を確認している。

 

できないって言って!

他の予約が入ってるって言って!

 

「うん。できるで。大丈夫や。」

 

うわーーーー。

 

「はい。わかりました。じゃそれで…」

 

「おう。がんばりやぁ。」

 

はぁ…

 

ブルーな気持ちで受話器を置く。

 

「どうや?できるか?」

 

おじさんがグラスの水割りを舐めるように飲みながら私に聞いた。

 

「はい。出来ますよ。それで、延長よりも『切り返し』っていうほうがお得らしいです。延長が3回だと…」

 

私はおじさんにお金の説明をしようと思い、延長と切り返しの違いを話そうとした。

 

「え?なに?よぉわからん。お金はあるからだいじょぶやで。じゃあと90分大丈夫なんやな。よーし。じゃ有里…?やんな?有里で合うてるやろ?飲め。」

 

はぁ…

まだ名前ちゃんと覚えてないし…

 

おじさんが何か嫌なことをしたり、嫌なことを言ったわけじゃない。

でも私はこれから始まる長い二人の時間を思うと憂鬱になっていた。

 

この憂鬱感はなんだろう…

 

おじさんとの時間はまだまだ続く。

 

 

つづく。

 

 

 

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