私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

107

 

中川さんの接客を終えて控室に戻るとさつきさんはいなく、杏理さんがテレビを観ながら一人で座っていた。

 

「おあがりぃー。」

 

杏理さんがテレビから目線をチラッと外し、私の方を見て挨拶をした。

 

「お疲れさまです。さつきさんは?お客さんですか?」

 

私がそう聞くと杏理さんは「うん。そうやで。」とサラッと答えた

 

「あー…どうでうすかねぇ…さつきさん。」

 

私はなんとなく心配だった。

イライラさせるしなんだかムカつくとこもある人なのに、人を心配させる“何か”がある人だった。

 

「なぁ。あの娘おっとりしてるからなぁ。」

 

杏理さんはあんまり興味がなさそうに答えた。

 

しばらくすると控室のドアがゆっくりと開いた。

 

 

「…えと…あがりました…でいいんでしたっけ?」

 

さつきさんが小さな声でそう言いながらそっと控室に入ってきた。

 

「あ!お上がりなさい。おつかれさまぁ!」

 

パッとさつきさんの方を見ると、また髪の毛がびちょびちょだった。

 

「え?!なんでさつきさんまた髪がこんなにびちょびちょなの?!」

 

驚いて私が言うとさつきさんは「え…?!」とゆっくり自分の髪の毛を触った。

 

「あ…えへへ…私…汗っかきで…これ汗です。」

 

そんなに汗かく?!というくらい髪が濡れている。

そしてそれをまた拭こうとしない。

 

「タオルは?持ってきてないの?」

 

さっきタオルの場所を教えたばっかりなのに手にタオルを持っていない。

 

「あぁ…忘れちゃった。えへへ。」

 

さつきさんは情けない笑顔で首をかしげてそう言った。

 

「んー!もうー」

 

私はそう言いながら、さっきさつきさんに教えた保管庫的な場所に行ってタオルをとってさつきさんに渡した。

 

「あ…ありがとうございます。有里さん…優しいなぁ。」

 

さつきさんはニコニコしている。

 

か…かわいい…

 

はっ!

不覚にもちょっとキュンとしてしまった!

 

うーん…

やっぱりこういう娘は男性受けするんだよなぁ…

 

いらだちもするけど、なんだか喜ばせたくなる衝動にかられる。

さつきマジック、恐るべし。

 

「どうでした?初のお客さんは?」

 

髪と顔をゆっくりと拭いているさつきさんに聞いてみた。

この人はなんて答えるんだろう。

 

「え?あー…すごく優しいお客さんで…助かりました。椅子もマットも全然できなくて…でもそれでいいって言ってくださって…。ほんとに良い方でした。有里さんの言った通りでした。んふふ。」

 

 

…あー…

なんか『模範解答』だ。

なんだよ。

可愛いじゃねーか。

 

「へー!よかったですねぇー!1人入っちゃえばちょっと気が楽かなぁ?」

 

私は極力明るくさつきさんを盛り上げようとしていた。

杏理さんがそっけなさ過ぎるのが気になって気をつかっていた。

 

「えー…そう…ですねぇ。なんとなくちょっとだけ気が楽かもしれません。ちょっとだけホッとしました。んふふ。」

 

あぁよかった。

私が『花』で最初に入ったお客さんは気難しい人で少し落ち込んだし、忍さんなんて泣いてたから。

それを思うとさつきさんは肚が座っているのかもしれない。

 

 

その日、さつきさんは結局2本のお客さんに入った。

そして最初にあった時とまるで変わらないペースと表情でひょこひょこと「お疲れさまでしたぁ…」と帰って行った。

 

 

「おう。有里、どやった?さつきは。」

 

仕事が終わり、控室でタクシーを待っている時富永さんが声をかけてきた。

 

「あ、お疲れさまです。えと…んー…可愛い方…ですねぇ。あはは…」

 

「お?そうか。まぁ可愛いか。天然やろ?ぶはは。」

 

富永さんが楽しそうに笑う。

私は「天然」という言葉でまとめていいものか?と少し疑問に思う。

 

「あー…まぁそうですねぇ。独特なペースですよねぇ。でもあれは男性ウケしますよぉ。これからすごそうですねぇ。」

 

私は複雑な心境でそう言った。

内心は焦っている。

私の予感が当たらなければいいのにと思っている。

そしてそんな自分が嫌だった。

 

「そやな。ああいうのはうけるんや。ちょっとボーっとしてるような女に弱いからのぉ。男っていうのは。さつきはなんかちょっと抜けてるやろ?アホみたいな感じあるやろ?ぶはは。」

 

富永さんはさつきさんを褒めてるのか貶してるのかわからないような言い方をしていた。

でも、その言葉は私をますます焦らせた。

 

やっぱり…

男性はああいう女が好きなんだ。

 

「そうですよねぇ。今日話しててちょっと胸がキュンってなっちゃいましたもん。」

 

悔しいけど事実だ。

 

「お?そうか?わしは全くやな。わしはああいうのは全くなんとも思わんわ。笑ってしまうだけやな。」

 

「え?そうですか?可愛いとは思いますよね?」

 

「ん?いやぁあんまり思わんなぁ。わしは気の強い頭の良い女が好きなんじゃ。

わしはお前の方がええと思うで。」

 

ん?

んん?

 

これは…

 

「あの…それ褒められてます?私、気ぃ強くないですよ。頭も良くないし。ん?」

 

「あははは!褒めとるんやで。有里は気ぃが強いやないかぁ。わしはそういう方がええなぁ。あはは!」

 

「褒められてる気がしないです。でもありがとうございますぅ。」

 

私はわざとふくれっ面でお礼を言った。

 

「そうや。明日来る娘はまた全然違うタイプでなぁ。これもまたおもろい奴やで。

明日も頼むわな。今日有里がかなり親切にしてくれたってさつきが言うとったわ。

ありがとうな。」

 

「あ…そうですか。はい。私でよければ。あ、でも明日は理奈さんも来るしちょっと安心です。」

 

「そうやな。杏理はあんな感じやし、理奈と二人でなんとか頼むわ。じゃ。お疲れさん。」

 

 

 

タクシーに乗り込み、私は「ふぅ」と溜息をついた。

さつきさんのことを色々考える。

 

これからすぐに人気が出そうだなぁ…。

私は…

 

…追い抜かれるのが怖い。

私より先に指名が増えていくのが怖い。

さつきさんの人気がすごくなったらどうしよう。

私より後に入ったのにどんどん人気が出たらどうしよう。

私の居場所がなくなってしまう。

せっかくあの店の一員になれたような気がしたのに、これでさつきさんの方が人気がでてしまったら…

 

怖い。

怖い。

 

 

さつきさんの指名があまり増えませんように。

人気がでませんように。

 

 

え…?

私、何考えてるの?

なに?

 

私はいつの間にか心で祈っている言葉に気付き、驚く。

 

なんてこと考えてるの?!

なんてひどいこと想っているの?!

 

私は私の立場やプライドを守るために人が成功しないように祈るような奴だということを知り驚く。

 

なんて汚いやつなんだ!

 

私は私の汚い部分をまた一つ知ってしまった。

でも祈るのを止めることが出来ない。

 

さつきさんがあの店で存在感が増すことを阻止したいと思っている。

 

怖い。

追いかけられているようで怖い。

 

私なんて吹けば飛んで行ってしまうような存在だ。

きっとすぐに追い抜かれてしまう。

 

…どうしよう。

 

私は自分の汚い部分を知り、そして居場所がなくなってしまうかもしれない怖さを感じ、いつもよりもお酒をたくさん飲んでしまった。

そして大量の食べ吐きをしてしまった。

 

自己嫌悪と虚無。

 

その両方に襲われながらも、食べ吐き後の朦朧とした頭に救われる。

私はどろどろな頭と身体をベッドに倒れこませ眠りについた。

 

 

きっと明日の出勤時にはまた綺麗に化粧をした顔と綺麗な格好をして、コツコツとヒールの音を響かせて出掛けるんだろう。

 

私は嘘つきで汚い気持ちを持つ嫌なヤツだ。

やっぱり私は私が嫌いだ。

 

 

明日はどんな日になるんだろう。

 

 

つづく。

 

 

はじめから読みたい方はこちら↓

はじめに。 - 私のコト