私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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ちょっと泣きながらの個室掃除を終え、着替えて下に降りるとまどかさんと富永さんが立ち話をしていた。

まどかさんはさっきよりももっと泣いていた。

 

「…あんな言い方ないやろ?私が悪いんやないやろ?そうやろ?なぁ富さん。」

 

まどかさんは気持ちがおさまらないらしく、富永さんに泣きついているようだった。

 

「おう。おう。まぁそうやな。あれはおかしかったな。よぉやったやないか。でもな、もう少し早くコールしてもよかったんやで。あれでもっと殴られてたりしたら大変なことになってしまうやろ?な?怖かったやろ?これからはもっとはよぉにコールせぇ。な?」

 

富永さんが優しくまどかさんの背中をさすっている。

 

「うん…うん…そやな…でもな、高橋さんのあれはガマンできひん。もう高橋さんがフロントにいるんやったらお店辞めるわ。」

 

まどかさんは泣きながら富永さんに訴えていた。

 

「そやな。あの高橋の言い分は間違ってるわな。うんうん。わしから社長に言ってフロント業務はしばらくわしに変わってもらうから。な?そんな辞めるなんて言わんと。な?高橋にもちゃんと言っておいたから。な?」

 

富永さんがまどかさんをなだめる声が聞こえる。

 

私は階段の途中で立ち止まり、話を立ち聞きしているような形になってしまった。

私の姿に気付いた富永さんが声をかけてきた。

 

「有里、お疲れさん!まどかの話し、聞いたんやろ?」

 

「あ、お疲れさまです。あー…はい、聞きました。」

 

私はゆっくりと階段から降りて二人に近づいた。

 

「そうか。悪かったな。他の娘たちはなんて言っとった?言える範囲でいいから教えてくれんか?」

 

富永さんはまどかさんの背中をポンポンと撫でながら私に向かって聞いた。

 

「あー…そりゃみんな怒ってましたよ。私もびっくりしました。高橋さんのあれは…ちょっとひどすぎると思いましたし、杏理さんなんかめっちゃ怒ってましたよ。もちろん理奈さんもですけど…」

 

富永さんは下を向きながら「うんうん」と頷いた。

 

「そうやな。うん。そりゃそうや。高橋も店長になって間がないし、対応をちょっと間違えてしまったんや。うん。これからちょっと社長に連絡するから。まぁちょっと堪えたってくれ。な?」

 

富永さんはぺこりと頭を下げた。

 

「え…?はぁ…まぁ…富永さんが対応してくれるんなら…はい…」

 

私はなんて答えたらいいかわからず、もごもごとした口調になってしまった。

 

「…わかったわ…高橋さんがフロントに入らんのやったらええわ。ほんまは店長辞めさせて欲しいけどな。それはいきなりは無理なんやろ?でも、今後他にも何かあったら私はすぐに辞めるから。」

 

まどかさんは涙を拭きながら強い口調で富永さんにそう言った。

 

 

「おう。そうやな。うん。うん。悪かったな。うん。」

 

富永さんは神妙な顔で謝った。

富永さんが悪いわけじゃないのに…。

 

「まどか、今日はゆっくり寝ぇ。な?有里もお疲れさん。」

 

「…お疲れさまでした。」

 

まどかさんはふくれっ面のままぶっきらぼうに挨拶をした。

 

「お疲れさまでした。」

 

まどかさんが控室の方に歩いて行った。

私は富永さんと二人になるとこっそり「今日ふく田に理奈さんと行くんですよ。」と富永さんに言った。

 

「お?そうか。」

 

富永さんが細い目をこちらに向けて答える。

 

「富永さんも後で来ますよね?」

 

富永さんともちゃんと話したい。

話しを聞いてみたい。

 

「うーん…これから高橋と話して社長に連絡して…やから、遅くなるとは思うけどな。」

 

富永さんは疲れた顔で頭を掻きながらそう言った。

 

「そうですよねぇ。でも多分長くいると思うんで、よかったら一緒に飲んでくださいね。」

 

私は富永さんの腕を軽く掴んで言った。

 

「ん?おう。わかった。」

 

富永さんは少しだけ嬉しそうな顔をした。

 

「じゃ、頑張ってください。」

 

私は手を挙げて富永さんに挨拶をして控室に向かった。

 

 

「おつかれー。遅かったなぁ。」

 

理奈さんがテレビの横で体育座りをしながらひょいとこちらを見て言った。

 

「あー!すいません!富永さんと話してましたー!」

 

「そうかー。私もいままで杏理ちゃんと話してたんよ。もう帰ったけどな。杏理ちゃん、怒っとったわ。」

 

杏理さん…

やっぱり相当怒ってるな…

 

「じゃ行こう!向こうでゆっくり話そうや。」

 

理奈さんはそう言うと携帯でタクシーを呼んだ。

 

 

 

『ふく田』の上品な看板が見えるとなんだかホッとする。

ガラガラと引き戸を開けるとそこは静かな落ち着いた雰囲気で、今までのわさわさした気持ちがスッと落ち着くようだった。

 

「いらっしゃい。あれ?理奈ちゃんと有里ちゃん?あらあらあら。珍しいー。よぉきてくれました。」

 

店長さんがにこやかに出迎えてくれる。

なんだかこれだけで来てよかったと思わせる声と笑顔だ。

 

「久しぶりやな。なぁ?私久しぶりやろ?」

 

理奈さんがカウンターに腰かけながら店長さんに気さくに声をかける。

 

「そうやわぁー。なかなか来てくれへんねんもん。寂しかったわー。」

 

店長さんが理奈さんにそう言うと理奈さんは笑いながら「また!嘘ばっかりや!店長は口がうまいからなぁ。有里ちゃん、この人にだまされたらあかんでー。」と笑った。

 

「また!理奈ちゃんはすぐそういうことを言うー。有里ちゃん。うわー有里ちゃんはほんまに観音様みたいやなぁー。」

 

「え?観音様?そういえばそんな感じやな。有里ちゃん、観音様やん。なぁ?」

 

「そうやろー?なんや有里ちゃんを見ると拝みたくなるんやわー。」

 

「なんやそれ?私も拝んどこ。あははは!」

 

「拝んどいたほうがええよ。理奈ちゃん。」

 

「ちょっと!やめてくださいよ!」

 

「あはははは!ええやんか!」

 

「ちょっと!もういいですから!早くビール下さい!」

 

「あ、そやったね。ビールビール。」

 

「そうやんな。ビールはよ頂戴!」

 

 

た…楽しい…

さっきまでのざわつきはどこかに行ってしまっていた。

この場所と理奈さんのお陰だ。

 

「じゃ乾杯。」

 

理奈さんが運ばれてきたビールのグラスを掲げて私に向かって言う。

 

「はい。乾杯。よろしくお願いします。」

 

「うん。ようこそシャトークイーンへ。なんて。あはは。」

 

2人でゴクゴクとビールを飲み干す。

 

「はぁーー!」

 

「くはーー!」

 

「美味しいわぁ。」

 

「美味しいー!」

 

理奈さんとこうやってビールを隣同士で飲めるなんて。

すごく嬉しかった。

 

「有里ちゃん、なに食べる?私はなぁ…」

 

理奈さんがリラックスした様子で気さくに話しかけてくれる。

ずっとナンバー1のすごい人が私に。

 

「えーと…何にしようかなぁ…」

 

2人で同じメニューを見ながら吟味する。

それだけでなんだか嬉しい。

 

注文が終わると理奈さんが「今日はびっくりしたなぁ」と話し始めた。

 

「ほんまに。びっくりしました。あんなこと今まであったんですか?」

 

「いやぁ~…あんまりないわ。でもまどかちゃんはたまにお客さんといざこざしてるけどなぁ。まどかちゃんはイチャイチャ派やからなぁ。お客さんも勘違いしやすいんやろな。今日とはまた違う感じやけどな。」

 

はー…

そうかぁ…

イチャイチャ派ねぇ…

 

「有里ちゃんはどんな感じなんやろ?すぐに指名がくるなんてすごいやん。まどかちゃん、結構気にしとったでぇ。」

 

理奈さんはちょっと意地悪な顔をしてそう言った。

 

「え?たまたまですよ!今日の最初の指名の方だってシャトークイーンの常連さんでしたし…どんな感じ…って…うーん…どんな感じなんだろう…?理奈さんは?どんな感じなんですか?」

 

私はどんな感じなんだろう?

イチャイチャ派…ではないのかなぁ…

 

「え?私?私は淡泊やでー。あははは。色気がないっていつも言われるからなぁ。だからまどかちゃんのお客さんとかがたまに入るとほんまに困るんや。できひんからな。イチャイチャとか。マットもあんまり好きちゃうしなぁ。」

 

やっぱりそうなんだ。

でもそれで指名がずっと一番って…

 

「それ、まどかさんにも聞いてたんですけど…どういうことですか?それでずっとナンバー1なんですよね?それがよくわからなくて…」

 

理奈さんは私の質問に「えー?あははは。」と笑った。

 

「ただ長いだけやって。長くおるからってだけやで。あははは。」

 

…違う…

絶対そんなことない。

 

「えーー!それはないですよ!理奈さんの秘密はなんですか?教えてくださいよー!」

 

私は理奈さんの肩をグッと掴んでふざけた口調でそう言った。

 

「あははは!秘密なんてないわー!私、ずっとこのままやで。ほんま。」

 

理奈さんの醸し出す雰囲気はすごく安らげる。

何を言っても気さくに返すそれは作ってできるものではないと思った。

 

 

「理奈さんはいつからこの業界にいるんですか?」

 

理奈さんのことがもっと知りたい。

何がきっかけで、どこから風俗生活が始まったのか。

そして何のためにやっているのか。

 

「私?18の時からやで。最初はピンサロやったんや。」

 

理奈さんは生まれも育ちも滋賀県の人だった。

普通滋賀県出身の人が滋賀県で風俗店に入ることは珍しい。

家族や友人にバレるからだ。

 

「父親がな、結構な乱暴をする人でなぁ。はよ家から出たくて18で家出したんよ。

母親とはだいぶ昔に離婚していてな。私と弟と父親で暮らしとったんや。弟が私よりも先に家を出てしまってなぁ。もう我慢できひんくなって18で出たんよ。

最初は京都に行ってな。寮がついてるピンサロに入ったんや。」

 

理奈さんは結構な暗い過去をすごく明るく話した。

ずっとニコニコしながら「今日は暑かったなぁ」なんて言うくらいのテンションで話していた。

 

「ピンサロ、楽しかったでー。ハッスルタイムっていうのがあんねんけどな、ガンガン音楽が流れてミラーボールがくるくる回るんよ。そんでな、お客さんの目の前に立ってスカートを捲りげて踊るんよ。あははは!あれは楽しかったでー。」

 

理奈さんはピンサロでの経験をほんとに楽しそうに話した。

私は聞いていてなんだか複雑な思いがした。

 

「次に京都のヘルスに行ったんよ。これがめっちゃ忙しくてなぁ。女の子たちも仲悪いし、土日なんてひっきりなしにお客さんが来るんよ。もうほんまにぐるぐるぐるぐるずっとやで。結構稼いだけど嫌になってしまってなぁ。そんで雄琴に来たんや。

なんとなく求人に載ってたシャトークイーンの姉妹店の方に面接に行ったんやけど、あっちは高級店で控室の雰囲気もあんまり良くなかったからな、クマさんに相談してシャトークイーンに移してもらったんよ。もう…4年以上になるんかなぁ。」

 

理奈さんは終始笑いながら軽い口調で話し続けた。

 

ピンサロ、ヘルス、ソープランド

いわば風俗街道の王道を行くパターンを歩いてきた人だった。

 

「まぁ…ソープが…」

 

理奈さんは話を続ける。

この後私は理奈さんの言葉に目を丸くすることになる。

 

 

つづく。

 

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