私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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中川のおじいちゃんとの約束に戸惑いながらも、私はその日のお仕事を終えた。

さすがに土曜日だけあってなかなか忙しかった。

 

指名が2本、フリーが3本。

5本入るとカラダはクタクタだった。

 

夜11時30分。

 

控室で休んでいると理奈さんがお客さんからあがってきた。

 

「上がりましたー。」

 

「あ、理奈さん。おあがりなさい。」

 

控室には私しかいなかった。

 

「なんや?有里ちゃん。疲れてるやないのぉ~。忙しかったもんなぁ。」

 

あ!

疲れた顔を理奈さんに見せてしまうと今日の飲みがなくなってしまう!

 

「いやいや!大丈夫です!ぜんっぜん平気です!」

 

「あははは!ほんまぁ?ほんまかぁ?」

 

理奈さんは可愛らしく意地悪な口調で私に言った。

 

「ほんまですよ!理奈さんは?疲れてませんか?」

 

「私?大丈夫やで。」

 

理奈さんは朝会った時となんら変わらない顔で答えた。

理奈さんだって5本は入ってるはずなのに…

 

「じゃ今日行けますか?」

 

私は期待を込めた顔で理奈さんに聞いた。

 

「有里ちゃんが大丈夫なら。私は行けるでー。」

 

ニコニコしている理奈さんの顔をみると、さっきまでのクタクタ感が消えていくようだった。

 

「やった!あとちょっとですね!」

 

「そうやな。あーはよビール飲みたい。」

 

「あー私もですよぉー。」

 

「有里ちゃん、結構飲めるんやろ?」

 

「んー…まぁまぁですかねぇ。19歳の時、塩舐めながら日本酒一升空けたことがあるくらいですかねぇ。」

 

「え?!塩舐めながらって…おっさんかー!しかも一升?!あははははは!」

 

「あははははは!頭おかしいですよねー。」

 

「おかしいわー!あははは!」

 

二人で笑い合っていると、まどかさんが控え室に戻ってきた。

 

「おあがりー。」

 

「おあがりなさーい!」

 

まどかさんはむすっとしながら「あがりました。」と言った。

 

私と理奈さんはそのまどかさんの様子を見て顔を見合わせた。

 

「はぁ!」

 

大きなため息をつきながら、バンッ!と持っているバックを床にたたきつけた。

 

すごくわかりやすく機嫌が悪い。

 

機嫌が悪い時も演技クサいのか…

 

しばらく様子を見てから、私はまどかさんに声をかけた。

 

「…まどかさん?…どうしたんですか?」

 

なんとなく声をかけて欲しそうな雰囲気だった。

まどかさんは待ってましたといわんばかりに、またもやとてもわかりやすくほっぺをぷうと膨らませた。

 

「わ!怒ってますねぇ。」

 

私はそのほっぺを膨らませたまどかさんに大きくリアクションした。

 

「もう!ほんまにひどいんやで!!」

 

まどかさんは膨らませているほっぺを元に戻して話し出した。

 

「お客さんになんか言われたん?」

 

理奈さんが冷静に話を聞く。

 

「ちがうねん!!私が何度もやだって言うてんのにな、お客さんが無理やりお尻の穴に挿れようとするんや!そんでな、何度も嫌やって言うてたらぶたれたんやで!!」

 

「え?!」

 

「え?!!!」

 

理奈さんと私は二人で驚きの声を出した。

 

個室でぶたれた…

お尻の穴に挿れようとした…

 

「そんで?そんでどうしたん?!」

 

理奈さんが真剣な顔でまどかさんに聞いた。

 

「そんでな、フロントにコールしようとしたんや。そうしたらそのお客さんが急にあやまりだしてな。何度も何度も謝るんや。コールの受話器を上げないように手で抑えながらな。」

 

「うん。そんで?」

 

「もうしないって何度も言うてな。だからコールせぇへんかったんや。」

 

「えー?!なんで…」

 

「なんでせぇへんの?!」

 

「だって何度も何度も謝るしな、土下座もしたんよ。だから…」

 

「そうか…。そんで?」

 

理奈さんが話しを促す。

 

「その後は普通にSEXして、普通に話して、そんで今上がったんやけどな…」

 

「…あぁ…よかった…」

 

私はまた殴られたのかと思ってドキドキしていた。

 

「有里ちゃん!それが良くないんや!!」

 

まどかさんは今にも泣きそうな顔をして私に言った。

 

「どうしたん?お金もらったんやろ?」

 

理奈さんがまどかさんの隣に行って声をかけた。

 

「もらったんや。個室ではちゃんともらったんや。でもな…」

 

まどかさんはとうとう泣きだした。

 

「…上がり部屋で『満足できなかったからお金返せ』って言ったらしくてな…」

 

えーーーー?!

何それ!!

 

「そんでな、高橋さんが私に半額返せって言うたんよ…ひどいやろ?!!」

 

はーーーーーー?!!

何それ!!!

 

「そんでな、私が高橋さんに怒ったんよ。なんで半額返さなあかんの?!だっておかしいやろ?」

 

うん!!

うん!!!

それ絶対おかしい!!

 

「そしたらな、冨永さんがフロントに入ってきて高橋さんに抗議してくれたんよ。

半額返せはおかしいって。結局お客さんに富永さんが話をつけてくれたんやけどな…

なんや…もう…悔しくてなぁ…」

 

まどかさんはさめざめと泣いた。

 

 

高橋ぃーー!

ぬおーーー!!

 

 

個室でそんなことがあったなんて…

どれだけ怖かっただろう。

その中、ちゃんと最後まで接客をして帰したまどかさんはすごい。

その娘にお客さんの言いなりになって「半額返せ」と言う高橋…

もう「さん」もつけたくない。

 

 

「で?結局お客さんにお金は返したんかな?」

 

理奈さんはまどかさんの背中をさすりながら冷静に話を聞いている。

 

「富永さんがお金は返せないって話しをつけてくれたみたいや…で、お店には出入り禁止にしたって言うとったわ…」

 

理奈さんは「うんうん」と頷いていた。

 

「まどかちゃん、よぉやったなぁ。よぉ頑張ったわ。私やったらすぐにコールして帰してしまったわ。ほんま、偉かったなぁ。」

 

理奈さんは背中をさすりながらまどかさんに優しく声をかけた。

 

「…もう辞めたくなったわ…。もう高橋が店長やったらここにいたくないわ…。」

 

うんうん。

そう言う気持ち、わかる。

私がまどかさんの立場だったら絶対そう思う。

 

 

「そうかぁ…。そう思うわなぁ。うんうん。」

 

理奈さんはただただまどかさんの話しに頷いて肯定していた。

アドバイスもしないし、否定もしない。

『辞めたい』と言っても引き止めもしなかった。

ただただまどかさんの話しに「うんうん」と言っていた。

 

その時、杏理さんが控え室に戻ってきた。

 

 

「あがりましたー。え?どないしたん?!」

 

杏理さんは泣いているまどかさんと控室の雰囲気に驚いていた。

理奈さんと私で状況を説明すると杏理さんは憤慨した。

 

「なんやそれ?!!めっちゃムカつくわーー!!富永さんがいてくれたからよかったけど、もしその場にいなかったらどうなってたか!!腹立つわーー!!」

 

杏理さんは小さい身体全身で怒りを表した。

 

「ちょっと高橋と話して来るわ。」

 

杏理さんは怒りがおさまらず、そんなことを言って控室を出て行こうとした。

 

「ちょっと!杏理ちゃん、ちょっと待ちぃ。」

 

理奈さんが杏理さんを引き止める。

 

「え?なんで?言わな気が済まんわ。これはみんなにも関係あることやろ?」

 

「いやいや。そうかもしれんけど、今言うのはよくないわ。しかも今はまどかちゃんがどうしたいか、やろ?」

 

杏理さんは理奈さんの言葉で行くのを思いとどまった。

 

「…杏理ちゃん、ありがとな。」

 

まどかさんが泣きながらお礼を言った。

 

 

「お疲れさまです。」

 

控室のスピーカーから富永さんの声で閉店の合図の声が聞こえた。

多分これも富永さんの気づかいだ。

この声が高橋の声だったら益々控室の雰囲気がおかしくなるところだった。

 

「さ、掃除しようか。」

 

理奈さんが明るい声で言った。

 

 

「うん…」

「そうやね…」

「はい。掃除しましょう。」

 

それぞれが返事をして掃除にとりかかる。

 

私は掃除をしながら「今日飲みに行く約束をしてよかった…」と思っていた。

このままお家に帰るなんて嫌だ。

 

黙々と掃除をし終え、理奈さんがフロントにコールをした。

 

「掃除終わりました。」

 

「お疲れさまでした。」

 

返事の声も冨永さんだった。

 

それぞれがそれぞれの思いのまま、個室掃除に行く。

 

「お疲れさま。」

「お疲れ。また明日な。」

「お疲れさま…」

「…ゆっくり寝て下さいね…お疲れさま。」

 

 

 

まどかさん…大丈夫かな…

杏理さんも不満だらけだったけど…

大丈夫かな…

 

 

私はその控室の雰囲気を引きずったまま個室掃除に向かった。

 

早く落ち着いて理奈さんと話したい…

 

ざわつく気持ちを早く沈めたい。

きっと理奈さんと話すことで落ち着くはずだ。

 

 

早く掃除を終わらせよう…

 

私はマットに勢いよくシャワーをかけ、スポンジでザッ!ザッ!と乱暴に洗った。

いつの間にかまどかさんのことを考えていた。

涙がちょっとだけ出てしまった。

 

 

つづく。

 

 

 

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94 - 私のコト

 

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