私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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控室にドキドキしながら戻る。

 

理奈さんに会えるかもしれない…

 

そう思いながら控室のドアを開けた。

 

「上がりましたー。」

 

「あ、有里ちゃん!お上がりー。あ、あと、おはようー。今日お客さん早かってんなぁ。大変やったなぁ。」

 

控室にはまどかさんしかいなかった。

こたつの向こう側にまどかさんが座っている。

ふと見ると私が立っている横、テレビのすぐ隣りに一つ座椅子が用意されていた。

 

あ…

ここに理奈さんが座ってたのか…

 

私はその理奈さんの席であろう場所の隣りに自分の座椅子をセットして座った。

 

「おはようございます。そうなんですよぉ。しかも理奈さんのお客さんで…」

 

私は今の時間が結構ショックでまどかさんに愚痴のような話し方をしてしまっていた。

 

「あーあるある。そういうことあるわなぁ。理奈ちゃんのお客さんやったらしゃーないわぁ。んふふふ。よぉ頑張ったやんか。うん。」

 

まどかさんはやっぱり演技クサい言い方で私を慰めた。

でも今の私は演技クサかろうがなんだろうがよかった。

まどかさんのその言葉にちょっと気持ちが軽くなった。

 

「えーと…理奈さんは…」

 

「ん?理奈ちゃん?今日はずっと指名が続いてるらしいで。控室にあんまり降りてこないんちゃうかなー。」

 

そうか…。

せっかく今日会えるかもしれなかったのに…

 

「もうすぐ一人目のお客さん終わるんちゃう?ちょっとは降りてくるで。まだ会ってないんやろ?」

 

え?

もうすぐ?

 

私はその言葉を聞いてソワソワした。

テレビに目をやってもマンガを開いてもただ見てるだけだった。

そんなこんなで時間が過ぎた。

 

廊下で足音が聞こえる。

「あははは…」と遠くで女性の笑い声が聞こえてくる。

 

あ。

理奈さんが来る。

 

「なにを言うとるのぉ~。そんなわけないやろぉ。あははは…」

 

控室のドアを開けながら上田さんと談笑している女性が顔を出した。

 

「あ、おあがりー。」

 

まどかさんがその女性に向かって声をかけた。

 

「おつかれー。あれ?」

 

その女性はまどかさんに向かって「おつかれー」と言った後、ふと私の方を見た。

 

「もしかして有里ちゃん?理奈です。よろしくなぁ。」

 

私は座椅子に座ったまま理奈さんを見上げていた。

 

「あ!有里です!よろしくお願いします!」

 

私はつい正座になり、ぺこりと頭を下げた。

 

「あははは。おおげさやなぁ。」

 

理奈さんは笑いながら座椅子に座り、まどかさんに「なぁ?」と言った。

 

「あははは。有里ちゃん真面目やから。なー?」

 

まどかさんはからかうような口調で私に向かってそう言った。

 

「あ…あははは。そうなんですよ。真面目すぎるほど真面目なんすよぉ。」

 

「へー。有里ちゃんおもろいなぁ。」

 

理奈さんはニコニコしながら私の方を見た。

 

理奈さんはさっきのお客さんが言っていたようにとてもスタイルが良かった。

程よくむっちりとしている太ももと二の腕とお尻。

それに大きなおっぱい。

エストはくびれ、足はムチッとしていながらもまっすぐで長かった。

とくに膝から下が長く、足首もキュッと締まっていた。

 

はー…

これはすごいスタイルだ…

 

そう思わざるをえなかった。

 

でもなぁ…

顔が…

 

理奈さんは決して美人ではなかった。

美人ではなかった…というより、まったく綺麗でも可愛くもなかった。

 

左右非対称に位置する眉毛、二重だけども小さくて離れている目、ぺちゃんこの鼻、ビーバーのように前歯がちょっとだけ大きくて出ている口元。

 

決して可愛くはない顔だけれど、可愛らしさと言うか愛嬌のある顔立ちだった。

 

「有里ちゃんはいくつなん?若そうやなぁ。」

 

理奈さんが気さくに笑ながら話しかけてくる。

 

「あ、21です。」

 

「ええっ?!わっかいなぁー!それに可愛らしいなぁ。」

 

理奈さんは私の年を聞いてかなり驚いていた。

そしてまるで無邪気に笑いながら「可愛らしいなぁ。」と褒めた。

それがとても自然で、まどかさんのような演技クサい部分が全くなかった。

 

「いやいや…。そんなことないです。…理奈さんはおいくつなんですか?」

 

私は全く可愛らしくはないのでその言葉は受け取れなかった。

 

「え?私?26やー。もうおばはんや。あははは。」

 

理奈さんの笑い方や話し方にまったく嫌味がなく、何気ない会話も楽しくしてしまう人だと思った。

“気さく”とは理奈さんのためにあるような言葉だと思わせるような女性だった。

 

 

「理奈さん。理奈さん。」

 

控室のスピーカーから理奈さんを呼ぶ声が聞こえた。

 

「はーい!」

 

理奈さんはペットボトルのお茶を飲みながら返事をした。

 

「ご指名です。スタンバイお願いします。」

 

「はーい。」

 

いそいそとトイレに行く理奈さん。

私はその後ろ姿を見て「なるほど…」と思った。

 

「じゃ行ってきまーす。有里ちゃん、また後で話そうな。」

 

一回控室に戻ってきた理奈さんが私に向かってそう言った。

 

「あ、はい。ぜひ!」

 

「うん。じゃーね。」

 

ニコニコ笑いながら控室を出て行く理奈さん。

私はその姿を見てもう一度「なるほどな…」と思った。

 

 

理奈さんが人気があるのがわかる。

このほんの少しの時間話しただけなのに、私はもうすでに理奈さんが好きになっていたからだ。

 

もっと話したい。

理奈さんともっとたくさん話したいし、一緒に時間を過ごしたい。

 

いつの間にかそんなことを感じていた。

 

 

「理奈ちゃん、いい子やろ?」

 

まどかさんが何故か上からの口調で私にそう言った。

 

「あ…はい。そうですね。すごい気さくな方なんですねぇ。」

 

「んふふふ。そうやねん。あれは人気でるわなぁ。でもな…」

 

まどかさんはニヤッと笑った。

 

「はい?でも…なんですか?」

 

「理奈ちゃんな、マット下手らしいで。SEXもそんなに好きやないみたいやし。理奈ちゃんの部屋から喘ぎ声聞こえたことないもん。お客さんでも理奈ちゃんの文句言うてる人おったで。」

 

まどかさんはずっと嫌な笑い方をしながら理奈さんの話しをした。

 

マットが下手でSEXが好きじゃない…

そうなんだ…

 

 

「まぁだから指名もあのくらいなんやろうなぁ。ずっとナンバー1なのはすごいけど、指名の数だけでいうたらもっとすごい人いっぱいおるもんなぁ。んふふふ。」

 

まどかさんは「んふふ」と笑いながら悪びれずにそんなことをしゃべった。

 

まどかさんはマットが得意でSEXが好きな人だ。

多分自分の方がすごいと言いたいんだろう。

理奈さんに指名の数で勝てないのが悔しいのかもしれない。

 

私はマットが下手でSEXが好きじゃないのにずっとナンバー1でいる方がすごいことだと思った。

 

「理奈さんの指名の数って…どれくらいなんですか?」

 

まどかさんは「え?」と私を見て面白くなさそうにこう答えた。

 

「先月は70本くらいだったんやない?」

 

まるでマンガのように「ぷい」と横を向きながらぶっきらぼうに言った数に私はびっくりした。

 

 

な…ななじゅっぽん…

 

どうやったらそんな数字をだせるんだ…

 

えーと…

出勤日数がだいたい20日くらいで…

そんで70本ってことは…

 

一日3.5本平均の指名数!!

 

えーと…

それに収入は…

 

70本×3万1千円で…

 

に…にひゃくじゅうななまんえん!!

一ヶ月の収入が217万円…

 

指名だけじゃなくてフリーにももちろん入るでしょ?

てことはもっとだ。

それをもう何年もやってるってことは…

 

理奈さん!!

すごい!!

 

 

私は理奈さんの人となりと実績を知って、ますます興味が湧いてきた。

 

なんとか理奈さんと仲良くなりたい。

そしてたくさん話を聞きたい。

 

私は強くそう思い始めていた。

 

 

 

つづく。

 

 

 

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88 - 私のコト

 

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