私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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「研修終わりましたー。」

 

私は一階のフロントのカーテンを開けながらそう言った。

 

「はい。お疲れさま。」

 

富永さんがいるとばかり思っていたらフロントに座っていたのは高橋さんだった。

 

「あ…はい…。」

 

私はなんとなく高橋さんが苦手だ。

富永さんと話したかったのに…

 

「じゃお客さんが来てから帰るまでの流れと料金について話しておきますね。」

 

高橋さんはフロントの椅子から立ち上がり、私を誘導した。

 

「研修どうやった?大丈夫?」

 

歩きながら高橋さんが嘘っぽい笑顔でそう聞いてきた。

 

「あー…はい。えーと…まぁなんとか。ははは…」

 

私は「大丈夫」ではなかった。

それに「なんとか、まぁ」な状態でもないし。

 

「まぁお客さんに入って慣れてくるもんだし、お客さんに教えてもらうのが一番いいですよ。ははは。」

 

 

え?

お客さんに教えてもらう?

え?

 

私は高橋さんが何気なく言ったその言葉に引っかかった。

 

「…お客さんに教えてもらうって…どういうことですか?」

 

立ち止まって高橋さんは私を見た。

 

「え?お客さんがいろいろ教えてくれるで。有里なんかまだ若いから、いくらでも教えてくれる人がおると思うで。」

 

…えー…

だってお金払って気持ちよくなりに来てるのに…

プロの技術を味わいにきてるのに…

教えてもらうってさぁ…

 

「きっと常連さんは喜んで教えてくれると思うで。はははは。」

 

いやいや…

「はははは」じゃないでしょ。

 

 

「お客さんがきたらここで入浴料を払って…」

 

高橋さんはこっちの気持ちをまったく無視して説明を始めた。

 

「フロントでお客さんが払う入浴料は一万円です。で、個室で女の子に払うお金が3万5千円。」

 

高橋さんは自動ドアから入ってすぐ左手にあるフロントの前で説明をした。

女の子は個室で頂いたお金からお店にバックをその都度払う。

個室で頂くお金は3万5千円。

フリーのお客さんの場合はそこから7千円をお店に払い、指名の場合は4千円。

フリーのお客さんについた場合は女の子の手元に2万8千円が残り、指名だと3万1千円が残ることになる。

 

「指名のお客さんがつけばつくほど稼げる仕組みです。」

 

これは「花」も同じだったけど…

金額が全然違う…

 

 

「お客さんはお金をフロントでお金を払ったらこっちの待合室に案内されます。

お茶を飲みながら待ってもらいます。」

 

高橋さんは入口から入って右手にある部屋を指して、その部屋の前まで私を誘導した。

チラッとしか見えなかったけど、とても品のある部屋のように感じた。

 

「その時点でフロントから控室にコールがかかります。『有里さん、有里さん』と二回呼ぶのでそこで『はい』と返事をしてください。そうしたら『お客様です』と言われるか『ご指名です』と言われます。そうしたらまた『はい』と答えて下さい。」

 

これもほぼ「花」と同じシステムだった。

 

「はい。わかりました。」

 

「そこから5分くらいで準備の時間としてとってますので、トイレに行ったり個室でなにか準備するなりしてください。だいたい5分くらいたったらここに立っていてください。」

 

高橋さんは待合室を出てまっすぐ行った場所にかかっている、黒いカーテンをバッとめくった。

 

自動ドアから入ると、すぐ目の前に大きくて立派な2階から下に行くほど広がっていく階段があるのが特徴的なシャトークイーン。

 

その階段の左側の端にそのカーテンはかけられている。

 

「このカーテンの後ろにいてくれたらボーイがこういうチケットを持ってきますんで。そのチケットを受け取ったら出てきて、ここでお客さんを待ってください。」

 

高橋さんは『90分 有里 ○○さん』と書かれた白い小さな紙を私に手渡した。

そして待合室の目の前、階段の前の床を指した。

 

「はい。」

 

「ここで膝まづいてお客さんを待ちます。」

 

え?

膝まづく?

 

「こうです。」

 

高橋さんはスッと状態を落として片膝を床につき、しゃがんだ姿勢になった。

 

「あ…はい。」

 

私は高橋さんのとなりでその姿勢を真似た。

 

「そうです。そうしたらボーイがお客さんに声をかけます。お客さんが待合室から出て来たら頭を下げて挨拶をしてください。」

 

「え…あ、はい。」

 

「こうです。『有里と申します。お二階へどうぞ。』」

 

高橋さんはグッと頭を下げて明るく挨拶をした。

 

「やってみてくれる?」

 

パッとこちらへ向き直し、私にそう言った。

 

「あ、はい。『有里と申します。お二階へどうぞ。』」

 

「うん。そうですね。そうしたら2階へご案内してサービスをスタートさせてください。時間がきて上がるときはお部屋のインターホンでコールしてください。」

 

「はい。」

 

「あと、ビールとかおしぼりとか欲しいときもコールしてくださいね。ビールは小瓶2本で500円。これはお客さんから頂いても自分で払ってもどちらでも任せます。」

 

高橋さんは説明をしながら歩き出した。

 

「こっちが上がり部屋です。」

 

高橋さんは待合室の反対側、フロント後ろにあたる場所にある部屋の前に案内した。

私が面接をした場所だ。

 

「お客さんをお返しするときはこっち側に階段を降りてきてください。

階段を降りながら『お客様お上がりでーす。』と言ってくださいね。その声でボーイが動きますから。」

 

階段の下までお客さんと降りてきたらそこでボーイさんにバトンタッチする。

ボーイさんはお客さんを上がり部屋に案内してお茶を出す。

女の子はその足でフロントに入り、バックを支払う。

 

「なんとなく流れがわかりましたか?」

 

高橋さんが私をのぞき込んで聞いた。

 

「えーと…はい…なんとなく…ですけど。」

 

「そうですよねー。すぐには覚えられないと思うのでわからなくなったらすぐ聞いてや。じゃ、控室いこか。」

 

高橋さんは丁寧過ぎるような敬語とタメ語を混ぜて話す。

そこもなんとなく好きになれない。

 

「じゃあとりあえず控室でゆっくりしててや。初日やから優しい常連さんについてもらうつもりやから。」

 

高橋さんは控室の前までくると私の肩をポンポンとたたいた。

 

「じゃ。がんばって。」

 

作り笑顔でそう言いながらフロントに戻って行った。

 

 

私は控室のドアを開けた。

目の前に座椅子にすわってるまどかさんがいた。

 

「あ!有里ちゃん!おつかれぇ~。」

 

まどかさんが笑いながら甘えた声で挨拶をした。

 

「あ、お疲れさまです。」

 

私は控室に上がりながらペコっと挨拶をした。

 

「どやったぁ?クマさんしつこくなかったぁ?あはははは!」

 

「え?あー…あははは…大丈夫でした。」

 

ちょっとまどかさんのテンションについていけず、引きつった笑いになってしまった。

そんなことは全く気にしていないまどかさんは、隣に寝そべっていたクマさんに向かってバンバン叩きながらこう言った。

 

「クマさん!有里ちゃんにしつこぉしぃひんかった?あれやろ?有里ちゃんみたいなのタイプやろ?!」

 

 

クマさんはちょっと身体を起こしながら「…なに言うとるんや。まったく。」とニヤニヤしながらボヤいた。

 

「有里ちゃん、今日お客さんつくんやろ?がんばってな!」

 

まどかさんは舌っ足らずな声でテンション高く私に言った。

 

「あ、はい。えーと…」

 

私はぐるっと控室を見回した。

 

控室にはまどかさんの座っている座椅子と、さっき杏理さんが座っていた座椅子と私が自分の為に用意した座椅子しかない。

 

さっきから全く席が増えていない。

 

「…今日は3人なんですか…ね?」

 

まさかと思って聞いてみた。

 

「え?あははは!そうやで!今日は…っていうか、有里ちゃんが来てくれるまでずっと3人やったんやで!」

 

今日は理奈さんがお休みだ。

それで私が入って3人…

ということは…

 

「え?このお店って…私が入って全部で4人ってことですか?!」

 

「そうやで。あはははは!ありえへんやろ?」

 

まどかさんが無邪気に笑った。

 

お店の女の子が全部で4人…

これはすごいとこに入ったぞ…

「花」とは大違いだ。

 

「有里ちゃん。やめんといてや。うふふ。」

 

まどかさんがいたずらっ子のように私に言った。

 

 

つづく。

 

 

 

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80 - 私のコト

 

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