私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

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富永さんの口から出てくる話しは私の興味をそそった。

怖いと思いながらも、どうしようもない虚無感を感じながらも、私は引き込まれていった。

 

「広田のおっさんも必死やなぁ。」

 

富永さんはがぽつりと言った。

 

「え?なんですか?」

 

私は富永さんの言葉の意味がよくわからなかった。

 

「あいつもお店の売り上げ上げるのに必死なんや。自分が可愛がってる女の子が稼いでくれたらお店内での株が上がるやろ?店長のままでいられるやろ?

田之倉とずっと張り合ってるからなぁ。負けたくないんやろ。」

 

田之倉さんと広田さんは確かに争ってる感じがあった。

お店内で険悪になることはあまりなかったけど、明らかに仲は悪った。

 

「麗の“コレ”に半分脅されてるんやと思うで。“アレ”をヤッてることは知ってるけど目をつぶってるんやろうなぁ。麗がお店に出てくれれば人気者やから稼いでくれるしな。」

 

麗さんが“アレ”をヤッているのはわかってるけど目をつぶる。

男から脅されてるのとお店の売り上げを上げるため。

麗さんがのボロボロの姿を見てもお店に戻す理由はそれだ。

 

「…なんか…辛いですねぇ…」

 

私は聞けば聞くほど言葉が出なくなった。

おねえさん達からだいたい聞いていた話だけど、実際に雄琴村で長年働いている男性から聞くのはリアルでしんどかった。

 

「まぁなぁ。…でもな、ちゃんとお金を残して成功してる女の子もいるんやで。

真面目にコツコツやってる娘ぉも結構おるんやで。だからな、有里。ちゃんと自分で決めたようにやらなアカン。な?」

 

そうなんだ。

ちゃんと成功している女性もたくさんいるんだ。

 

「はい。そうですよね!」

 

『落ちていく女性と成功していく女性の違いってなんだろう?』

 

新しくノートに書く言葉ができた。

帰ったら早速ノートに書いておこう。

 

「…今実はワシも必死なんや。」

 

富永さんが「はぁ…」とため息をつきながら言った。

 

「え?そうなんですか?どうしたんですか?」

 

「…うん…あのな…」

 

富永さんがポツポツと話しだした。

 

「有里が店に電話した時に出た男おるやろ?高橋っていうやつな。」

 

「はい。」

 

「…今の店長はあいつなんや。」

 

「え?富永さんが店長なんじゃ…」

 

「…ちがうんや。」

 

富永さんは少し引きつった顔で経緯を説明してくれた。

 

原さんから私を紹介されたすぐ後、雄琴内にあるシャトークイーンの姉妹店「シルバークイーン」のボーイさんだった高橋さんがやってきていきなり店長に抜擢されたらしい。

高橋さんは某大手企業に勤めていた経験があり、すこぶる数字に強い。

お店の売り上げ率や女の子の指名率、これから伸びる確率なんかを数字化して社長に説明したら見込まれてしまったらしい。

 

「ちょうど女の子が少ない時でなぁ。わしも必死でやったんやけどな。アカンかったわ。」

 

売り上げが中々上がらないことを指摘され、店長を変えてみようと言われてしまったと富永さんは言った。

 

「でもな、そんなんやないとわしは思ってるんじゃ!数字なんかやない!と思ってる。だからな、わしはあきらめんよ。わしはわしのやり方でお店を盛り上げていこうと思ってるんや!女の子たちにも稼いでもらわなあかんやろ!だからな、有里。うちに来てくれるならわしは全力でやったるで!有里にも稼がしてやらなな!な?!」

 

富永さんは拳を握ってテーブルをドンと叩きながら熱弁をふるった。

私は急に熱く語りだした富永さんに好感をもった。

 

「んふふふ。はい!よろしくお願いします!あははは!」

 

私はグッとテーブルに頭を近づけてお辞儀をした。

そして顔を上げて笑ってしまった。

 

「笑いごとやないで!有里!そうやろ?」

 

富永さんはドンとまたテーブルを叩いた。

 

「このままでは行かんのや!やったるでぇ!やったるでぇ!サブちゃんの『祭り』っていう歌しっとるじゃろ?あれはなぁ…」

 

富永さんが急にサブちゃんの話をし始めたのでまた私はおかしくなってしまった。

 

「あっははははは!急にサブちゃん!あははは!」

 

「有里!笑いごとやないでぇ!わしはやったるでぇ!なぁ?!一緒にがんばろな!」

 

「あはははは!あーおかしい!はいっ!がんばりますっ!あははは!」

 

 

富永さんとの時間はすごく楽しかった。

私はいつの間にか何回も大笑いをしていた。

これから始まる新しい店での毎日に不安はあるけれど、なんとなく楽しくなりそうな予感がしていた。

 

私は富永さんと知り合えたことを喜んでいた。

 

 

「じゃ、明日待ってるわな。おやすみ。お疲れさま。」

 

富永さんはタクシーでマンションの下まで送ってくれた。

 

「ありがとうございました!明日からよろしくお願いします。」

 

私は窓越しに頭を下げて挨拶をした。

タクシーが見えなくなるまで見送ると、フラフラと部屋まで戻った。

 

「あ…忘れないうちに書いておかなくちゃ…」

 

酔っぱらいながら引き出しにしまってあるノートを取り出し、ぐちゃぐちゃの字で書きなぐる。

 

『落ちていく女性と成功する女性の違いってなんだろう?』

 

書いてから首をかしげる

 

「…なんだろうなぁ…」

 

私は今までこのノートに書いたことで、わかったことが一つもないことに気付く。

 

わかる時がくるんだろうか?

わからないまま死ぬんだろうか?

 

「…明日は面接と…その後小林さんか…」

 

胸がドキドキする。

明日から新しい毎日が始まるような予感がした。

 

 

つづく。

 

 

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65 - 私のコト

 

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