私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

 

次の日の朝、私は出勤してきた広田さんを捕まえて休みの話をした。

それは私にとって、とても勇気がいることだった。

 

まだなにもお店に貢献できてないのに、こんな私が休みの交渉をしていいんだろうか…。

 

そんな思いだった。

K氏のもとにいる時は休みなんてほとんどなかったし、自分から「休みたい」なんて言った日にはなじられて、殴られるだけだったから。

 

ドキドキしながら聞いてみた。

 

「おはようございます。あのぉ…広田さん…」

「おう!有里。おはよう!昨日は原と楽しかったか?ん?どうしたん?」

 

広田さんは私がもじもじしているのを察知した。

 

「あ、えっと、はい。楽しかったです。えーと…あの…私のお休みって…」

「ん?お休み?」

 

広田さんが聞き返してきたことで私の心臓はドキンとした。

 

「あ…はい…あの…」

 

K氏の怒りの表情と殴られる恐怖が蘇る。

いつの間にか手に汗をかいていた。

 

「おー!そうやったな!お休みな!決めてなかったなぁ。悪い悪い!」

 

ホッ…

はぁ!はぁ~…

…よかった…

 

胸を撫で下ろす。

 

私は結局火曜日と水曜日がお休みになった。

今日は土曜日。

今日を入れて3日勤務したら休みだ。

 

「ありがとうございます!連休なんていいんですか?!」

「へ?みんなだいたい連休やで。まぁ早く稼ぎたいって子ぉは週一日休みの子ぉもたまにおるけどなぁ。」

 

私が連休をもらえたことに大喜びして感謝しているのを、広田さんは不思議な顔で見ていた。

 

お休みがもらえる。

だれに気兼ねなくお休みを過ごすなんてどれくらいぶりだろう。

あと3日を頑張ろう!と思えた。

 

 

土曜日と日曜日はかなり忙しかった。

休憩時間なんてほんのわずかな時間しかなかった。

お客さんに入っては片づけ、またすぐに入っては片づけていた。

50分、70分、90分…

もう自分が何分コースのお客さんを相手にしていて、今が何人目のお客さんなのかわからなくなるくらいだった。

 

一日中ローションにまみれ、お風呂に何回も入り、おちんちんを何回も口にくわえ、何回も挿入した。

おっぱいもクリトリスも膣内も触られまくった。

キスだって何度も何度もした。

 

 日曜日の夜、私はクタクタになっていた。

 

「有里。大丈夫かぁ?」

 

広田さんがぽてぽてと力なく廊下を歩く私に声をかけた。

 

「あ、はぁい。…つ…疲れました…。」

 

私は廊下に倒れこむ真似をした。

 

「わははは!そんなことができるなら大丈夫やな。忍は?忍は大丈夫そうか?」

 

はっ!

自分のことで精一杯で忍さんのこと気にしてなかった。

 

「あ!わかりません!どうなんでしょう?みんな忙しかったですよね?」

 

土曜日も日曜日もお客さんを帰して控室にちょっと戻ると、いつも誰もいなかった。

みんなお客さんについていた。

 

「おう。まぁでも有里と忍が一番忙しかったんちゃうかな。」

 

その時、忍さんが下に降りてきた。

 

「あ!忍さん!お疲れさまでした!大丈夫ですか?」

 

初日に泣いていた忍さん。

2日目は笑っていたけどその後のことはほとんど知らなった。

隣の部屋に住んでいるとはいえ何も接点がなかったし、ほとんど顔も合わせなかった。

 

「え?大丈夫って何が?」

 

忍さんはキョトンとしていた。

 

「え?えっと…忙しかったですねー…」

「そうやねぇー!忙しかったねぇー。もうクタクタやわぁー。」

 

明らかに雰囲気が違う。

すごく明るくなっている。

そしてなんとなくふっくらとしていた。

 

「はぁーお腹空いた!もうね、最近めちゃくちゃお腹空くねん。有里ちゃんは?そんなことない?なんか食べよう!」

 

ハキハキと話す忍さん。

初日の研修の時とはまるで別人だった。

 

「おう!いいなぁ!忍!その調子やでー。」

 

台所に消えていく忍さんに向かって広田さんが言った。

 

「…元気だぁ…。なんか変わりましたねぇ。忍さん。」

「おう。そうやなぁ。でもあの食欲…ちょっとふっくらしたやんな?忍なぁ?」

 

広田さんが私に聞いた。

 

「そうですよねぇ。まぁ細い方やし、もっとふっくらした方がいいですよねぇ。」

「まぁなぁ。でもあれかもしれんわ。ピルが合わへんのかもしれんわ。有里は?大丈夫か?」

 

ピル?!

ピルのせい?!

 

初日に婦人科へ血液検査に行った時から、処方されたピルを飲み始めていた。

ソープ嬢はピルの服用が決められていた。

 

「太ることもあるからねぇ。合わなかったら別のピルにするから言うてなぁ。」

 

そう先生に言われていた。

ピルで太ることを恐れていたけど、私は逆に気持ち悪くなっていて食事があまりできないでいた。

それを密かに喜んでいたところだった。

 

「これからもっと太るかもなぁ。有里も気ぃつけやぁ。お疲れさーん!」

 

台所に行くと忍さんがお皿におかずを盛っていた。

 

「ここのゴハン美味しくないんやけどなぁ。まぁでもお腹空いてるからええわー。」

 

私の方を見ながら今度は炊飯器からゴハンを盛っていた。

 

や…山盛り…

 

お皿の上にはおかずとゴハンが大盛りで盛られていた。

もう夜の12時半過ぎ。

 

「えー…忍さん、すごいですねぇ…。これ食べて寝るんですか?」

「うん?そうやでー。だってお腹空いちゃったんやもん。有里ちゃんは?食べへんの?」

 

忍さんは大きな口を開けてもりもりとワフワフとすごい勢いで食べていた。

 

「いやぁ…。私はコレ飲んで寝ますぅ。」

 

ビールを見せてぺこっと頭を下げた。

 

「へー。ほんまぁ?お疲れさまー。もぐもぐ。」

 

異様な食欲だった。

食べ方もなんだかおかしかった。

 

「大丈夫かなあ…」

 

独り言を言いながら部屋に戻ろうと階段を上がった。

 

「あ!」

 

二階の廊下にいたのは詩織さんだった。

 

「詩織さん!お疲れさまです!」

 

詩織さんの姿を見たのは初日以来。

なんだか嬉しくなって駆け寄った。

 

「あぁ!有里ちゃん。お疲れさまー。どない?」

 

ちょっと疲れた顔と気だるい雰囲気の詩織さんは色っぽかった。

 

「はい!もう毎日大変で。でも詩織さんに教わったとおり頑張ってやってます!」

 

私は詩織さんとまた話せたことが嬉しかった。

 

「そう。頑張りやぁ。またなぁ。」

 

詩織さんはなんだかそわそわとしていた。

詩織さんのTELが鳴る。

 

「あ!有里ちゃん、ちょっとごめんなぁ。はい?もしもし?うん。もう今出るとこやって。ん?今日?忙しかったから…うん。ちゃんと渡せるって。大丈夫。え?だって、こないだ5万渡したばっかやないのぉ…え?」

 

サバサバはきはきしたしゃべり方の詩織さんが、女性らしい甘えたような声で話している。

小さな声で、私に聞こえないようにしゃべっているけど、たしかに「5万渡したばっかやないの…」と聞こえた。

 

詩織さんにも『おっさん』がいるんだ…

 

会話の内容からしてそんな感じなんだと思った。

そしてそれがなんだか悲しく感じた。

 

「うん。じゃあすぐ行くから。じゃあね。」

 

TELを切る詩織さん。

 

「有里ちゃん。またな。がんばって。」

 

背中をポンポンと叩いて急いで階段を下りる詩織さん。

 

「あ、はい!お疲れさまです!」

 

階段を駆け下りる詩織さんに向かって挨拶をする。

 

「…ふぅ…詩織さんもかぁ…」

 

疲れがドッと押し寄せる。

部屋に戻って缶ビールを開けた。

 

初日から4日目。

毎日広田さんに一万円ずつ返していた。

明日で一応5万円の返済が終わる。

手元にはいつの間にか10万円以上の現金があった。

 

私はこれから700万円を貯めなければいけない。

期限をまだ決めていなかった。

 

どうしよう…。

 

手元の10万円以上の現金をジッと見ながら考える。

 

お金って一体なんなんだろう?

 

現金を手に取り、感触を確かめる。

 

「ただの紙なのになぁ…。」

 

このお店にいる女性も男性も、この紙に翻弄されている。

それは私も同じことだった。

 

ビールを飲みながらお金を触り続ける。

お金を見続ける。

 

「変なの…」

 

明日の勤務を終えたら郵便局に行こう。

口座を作ってお金をそこに入れていこう。

それからお休みの日にゆっくり期限を決めよう。

 

そんなことを考えていた。

 

カラダ全身がじんじんする。

『クタクタ』とはこういう事をいうんだなぁと思う。

 

膣周りがずきずきと痛んだ。

少し切れているようだった。

 

「とりあえず明日一日がんばろう…」

 

布団に潜り込んで泥のように眠った。

 

 

 

 

続く。

 

 

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