私のコト~私のソープ嬢時代の赤裸々自叙伝~

私の自叙伝です。雄琴ソープ嬢だった過去をできるだけ赤裸々に書いてます。

 

その後、私は2人のお客さんについた。

50分コースと70分コース。

「花」ではその二つのコースを選ぶお客さんが多いと知った。

そして50分コースの難しさを体感していた。

 

潜望鏡もやってマットもやってベッドも…

うーん…

どう考えても時間が足りない…

 

幸いにも(?)今日のお客さんは二回目のベッドでの本番は求めて来なかったから良かったけど、ガッツリ二回目もヤリたい!の人が来たらどうしたらいいんだろう?と思っていた。

 

そしてやっぱりマットにはまだまだ慣れない。

コンドームもスムーズに付けられない。

 

はぁ…。

私についたお客さん、可哀想過ぎだわ…。

 

閉店時間。

個室の掃除をしながらなんだか涙が出てきた。

何も出来ない自分が悔しかった。

お客さんから何かを言われたわけじゃないのに。

「ありがとう!」と言って帰ってもらえたのに。

 

まだ二日目じゃん!

まだ始まったばっかりじゃん!

 

一生懸命自分に言い聞かせる。

でもなんだか悔しくて涙が出てくる。

 

コンコン。

 

個室のドアを小さく叩く音がした。

急いで涙を拭いて返事をする。

 

「はぁい。」

 

カチャとドアを開けると原さんがニコニコしながら立っていた。

 

「有里ちゃん、もう終わる?」

 

周りを気にしながら小声で聞く。

原さんのニコニコ顔を見たら少し元気がでた。

 

「あ、はい!もう少しです。」

 

小声で答える。

 

「じゃ、もう少ししたら控室に行くから。そこでね!」

「はい!」

 

泣いてる場合じゃない。

早く終わらせよう!

 

先輩に飲みに誘われることがこんなに嬉しいなんて。

 

急いで個室の掃除を終わらせ下に降りる。

一回の廊下で広田さんがウロウロしていた。

 

「あ!広田さん!」

「お?おう。有里。どうや?お疲れやったなぁ。」

 

ジミー大西そっくりな、くしゃっとした顔で広田さんは言った。

 

この人が…麗さんのおしっこ検査を見逃してたりするんだ…

麗さんが「コレ」をやってるのを知ってるのに働かせてたりするんだ…

助けたりとかしないんだ…

 

なんだか広田さんに対するイメージが変わってしまいそうだった。

 

いや、でもただの噂だし。

ほんとのことはわからないんだから今は気にしないようにしよう。

 

「お疲れさまです。なんか…難しいですね!このお仕事って!」

 

気を取り直して話す。

 

「おう。そうやなぁ。でも有里ならだいじょうぶやって。筋肉痛か?大丈夫か?」

 

優しい。

やっぱり優しい人だ。

 

「はい。まぁ、筋肉痛は酷いですけど。あはは。あ!これ。」

 

一万円を広田さんに手渡す。

 

「今日の分です!ありがとうございました!」

「お?…おぉ…」

 

広田さんはちょっと戸惑いながら一万円を受け取った。

 

「…有里…ほんまに大丈夫なんか?そんなに急がなくてもええんやで。」

 

心配そうに私に聞く。

やっぱり優しい。

 

「はい。大丈夫ですよ!あと3万ですね!」

「おぉ…。ありがとな。」

 

小さな声でお礼を言われた。

 

「借りたお金返してありがとうって言われるのって変ですねー。あははは。」

「…まぁ、そうやなぁ。ははははは。」

 

「お疲れ様でしたー!」

「お先にー!」

「お疲れー!」

 

お姉さんたちが次々と帰っていく。

 

「有里ちゃん、また明日なー!」

「有里ちゃん、今度部屋見せてなー!」

「有里ちゃん、ゆっくり寝ぇやー。」

 

お姉さんたちは私に声をかけてから帰っていく。

それがまた嬉しかった。

 

「お?有里。どっか行くんか?」

 

広田さんは私がパジャマ的なものを着ていないことに気付いた。

 

「あ、えーと…。原さんが飲みに誘ってくれたんで…行ってきます!」

 

広田さんにならいいかと思い言ってしまった。

 

広田さんの顔が一瞬曇る。

 

「ほー…。まぁ原なら平気かぁ。でもなぁ、有里。あんまり先輩たちと飲みに行くのは薦めんなぁ。…ま、でもな。楽しんでおいで。」

 

へ?

なんで?

私の時間だよね?

なんでそんなことを言われなきゃいけないんだろう?

 

私はその広田さんの言いっぷりに若干腹が立った。

でも今はその気持ちは追いやって明るく言った。

 

「はい!誘ってもらったのが嬉しくて!行ってきますねー!」

 

控室に行くと原さんが一人で座っていた。

 

「すいません!遅くなって!」

「いいんよー。バレへんかった?んふふ。」

 

いたずらっ子のように笑う原さんが可愛かった。

 

「はい!大丈夫です!」

「じゃ、行こうか!タクシー呼ぶわ。」

 

原さんは携帯電話でタクシーを呼んでくれた。

 

「はい、そうそう。『花』まで来てくれます?原です。はーい!」

 

その様子を見て「へー…『花』の店名だけで来てくれるんだ…。タクシー会社も雄琴村仕様なんだなぁ…」とちょっとびっくりした。

 

「すぐ来るって。行こうか!」

 

スッと立った原さんを見てエッ?と思った。

いつもは黒い総レースのボディコンの超ミニ丈ワンピースを着ている。

長身で長い手足を強調するような服装だ。

お腹のぼこぼこがそれ以上に目立ってしまっているのが残念だった。

でもそこにはベテランソープ嬢の雰囲気をばっちりと漂わせていた。

 

私服の原さんは、下はジーパン、上は白地に緑のよくわかんない柄の入ったダボッとしたトレーナー姿だった。

 

えー…

全然違う…

普通のおば…いやいや…普通のその辺にいる女性じゃん…

 

すごく当たり前のことなのに私はその事実に驚いた。

 

こっちが原さんなんだなぁ…

 

私服の原さんはなんだかすごく素朴で、そしてとてもリラックスしているように見えた。

 

「有里ちゃん。今日はな、ちょっと車で行ったとこの居酒屋にしたからな。あそこならほとんど雄琴の女の子来ぃへんからな。」

「はい。楽しみだなー!」

 

タクシーの中で原さんとウキウキしながら話す。

 

「有里ちゃん、お酒好きなんやろ?」

「はい!浴びれます!」

「あはは!浴びんでええから!」

「いや、浴びろと言うなら浴びますから!」

「だから浴びんでええって!あははは!」

 

楽しい。

ソープ嬢になって、こんなに楽しい時間が来るとは思ってもみなかった。

 

「ここやで。」

 

原さんが連れてきてくれたのは国道沿いにポツンとある『炉端焼居酒屋』と書いてあるお店。

オレンジの看板とぶら下がっている赤い提灯がなんだかグッとくる。

 

「こんばんわー!」

 

暖簾をくぐりながら原さんが挨拶をした。

 

「いらっしゃい!お?なんやー美咲ちゃんやないかー!」

「はは!どうもー!久しぶりですぅ~」

「ほんまにひっさしぶりやのぉー!どうしてたん?」

 

美咲ちゃん?

原さんの本名かな?

 

「こっちね、新人の有里ちゃん。」

「あ!こんばんわ!よろしくお願いします!」

 

お店の大将らしきおじさんに挨拶をする。

 

「お?美咲ちゃんが後輩連れてくるなんて珍しいやないの?よろしくね!有里ちゃん。

わっかいなー。可愛らしい子ぉやん!」

 

明るい元気な大将だった。

 

「そうやろ?有里ちゃん若いねん。それになぁなんか頑張り屋さんっぽくてなぁ。

なんかほっとけなくなってしまってなぁ。あははは。」

「え?そうだったんですか?えー!」

「そうかそうかぁ。美咲ちゃんもそんなこと言ようになったんやなぁ。あははは!」

 

原さんがそんな風に思ってくれたなんて。

 

「あのぉ、原さん、美咲ちゃんって…」

「あー!雄琴に来た最初はそういう源氏名やってん。龍宮御殿の前はサークルやろ、その前はアメジストにおったしな。」

 

原さんは今の「花」は4件目だと教えてくれた。

 

「札幌のすすきのが始まりやったなぁ。有里ちゃんくらいの時やな。」

 

原さんは自分の経緯を話し出した。

運ばれてきたビール飲みながら、焼き鳥と厚揚げをつまみながら。

 

原さんは北海道出身者だった。

 

「道内の子は普通すすきので働かへんのや。バレるのを怖がってな。でも私はバレても別に良かったしお金も無かったし、すすきのにしたんや。」

 

原さんは父子家庭で育ったと言った。

お酒を飲むと暴力を振るう父親。

思春期になったころ、父親にレイプされそうになって家出をしたと言った。

 

「えーーーー!!なんですか?!それ?!」

 

淡々と笑顔で語る原さん。

そこがまたびっくりだった。

 

「まぁ最低やな。そんな父親やねんなぁ。だからまぁちょっとバレないかなぁとか思ってたのよ。ちょっとは心配してくれへんかなぁとかね。ま、そんなこと一切なかったけどな。」

 

原さんは少しだけ淋しそうな顔をした。

私もそれを見て胸がちょっと痛んだ。

 

「ま、そこが始まりでその後流れて岐阜の金津やろ。その後兵庫の三ノ宮。で、雄琴や。」

 

原さんは地方の大きな歓楽街の名前を出した。

 

「えー…。金津も三ノ宮も行ったんですか?で…どうして雄琴に…?」

「女の子の取り分が高いんや。金津も三ノ宮も五分五分やったからなあ。すすきのなんて4・6やで!女の子が4!ひどいやろー?!」

 

原さんは雄琴は6・4だと強く言った。

6が女の子の取り分。

 

「へー…。そうやったんですかぁ…」

 

今日もいろんな勉強ができたなぁと思っていた。

 

「私の話はええか。麗ちゃんな。」

 

あ!そうだ!

麗さんの話し。

原さんの話が結構なインパクトですっかり忘れていた。

 

「麗ちゃんな、沖縄の子ぉやねんな。」

 

原さんは沖縄の子が関西圏の風俗によく流れてくると言う。

顔も派手で可愛らし子が多いし、何よりなかなか沖縄県内で仕事が無く、あっても賃金が安いため、こっちに流れてきやすいと教えてくれた。

 

「沖縄にスカウトマンがめっちゃ行くねん。女の子こっちに引っ張りに行くんや。」

 

スカウトマン?

風俗の?

 

「まー金づるを引っ張ってくるってことやな。で、雄琴の顔見知りのお店とかに女の子紹介して紹介料をとる。で、ソープで働き始めたその女の子も自分の女にしてお金をほとんどふんだくる。こういう流れやなぁ。」

 

わー…

なにそれー…

 

「え?それって人身売買じゃないですか?」

「まぁそやなぁ…。でもそんなのどこでもある話しなんやで。大阪の飛田新地って知ってる?」

 

また私の知らない言葉が出てきた。

 

「いや…、わからないです…」

「ちょんの間って呼ぶけどな。まぁええわ。そこなんて、未だに親が子どもを売りに来たりするらしいで。そこもやっぱり沖縄の子ぉ多いって聞いたなぁ。」

 

え?

え?え?え?

えーーーーーー?!

親が?!子供を?!

今の日本で?!

えーーーーーーー?!

 

あまりの驚きに目は見開き口はあんぐりと開いていた。

 

「あはは!大丈夫か?有里ちゃん?」

「…えっと…はぁ、はい…」

 

なんとかビールを飲んで気持ちを落ち着かせる。

 

「でな、麗ちゃんもスカウトマンってやつに連れて来られたんや。」

 

もうなんだか胸がドキドキして先を聞くのが怖くなっていた。

でも…

…聞きたかった。

 

「来た頃はふっくらしててなぁ。可愛らしかったでぇ。ええ子やし、頑張り屋さんやし、素直やし。広田さんも麗ちゃんが可愛くて仕方ない感じやったなぁ。」

 

そうなんだ…

そりゃ可愛がるよねぇ…

 

「でも、だんだんとおかしくなっていったんや。ご飯はほとんど食べなくなるし、どんどん痩せていくしな。シワシワになっていくんよ。目の焦点も合わへん時もあってな。」

 

麗さんの日々を思うとなんだか苦しくなってきた。

沖縄から連れて来られてボロボロになっていく様が痛かった。

 

「そのうち腕の肘のところにゴムを巻き始めてなぁ。もうこれは完全にヤバいなと思ったわ。だからな…」

 

 

原さんの衝撃的な話はまだまだ続く。

 

 

 

 

 続きはこちら↓

㉘ - 私のコト

 

 はじめから読みたい方はこちら↓

はじめに。 - 私のコト